──電車ではベビーカーを折り畳めとか、飛行機や新幹線の中で子供を泣かすなとか、母親に対する風当たりは強い。

駒崎:要因の一つは非婚社会にあります。前回国勢調査(2010年)では1人暮らしの「単独世帯」が3割を超え、それまで最も多かった「夫婦と子供から成る世帯」を抜きました。今や、子育て世帯はマイノリティなのです。

 これまでは、子供がいなくても幼い弟や妹の世話をするなど育児の疑似体験を持つ人が多かったので「子供とはそういうものだ」という社会的コンセンサスがある程度できていた。ところが今の非婚・未婚者の多くはそうしたことを肌で感じられず、「なんで親がちゃんとしないの?」と思ってしまう。

「子供のことは母親の責任である」とする風潮には核家族化の影響も大きい。実はこれは日本人が戦後になって初めて経験した家族形態で、それまで祖父母や地域のコミュニティが一緒に子育てしていたのが、父親は外で働き、専業主婦の母親が1人で家事をしながら育てるスタイルが主流になった。

 しかし、専業主婦が最も多かったのは1970年代で、それ以降ずっと減り続けている。2012年総務省労働力調査によると6割が共働き世帯です。今の祖父母世代が経験してきた「専業主婦による子育て」は長い歴史で見ればむしろ例外であり、働き方・育て方はどんどん変わっているのです。

※SAPIO2014年6月号

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