選挙は三バン、地盤(後援会)、看板(知名度)、カバン(資金)の三つが必要といわれる。混戦を勝ち抜くために小さい集会や立会演説などを繰り返し、一人一人と握手をして支持を訴える「ドブ板選挙」を行えと言われる。古くは田中角栄、最近でも小沢一郎が選挙区をくまなく回り、辻立ち演説や町内会単位での後援会組織をつくるよう同じ派閥の議員たちに強く説いてきた。
AKB総選挙の場合、関わってくるのは地盤と看板の部分だろう。看板にあたる知名度で若手はキャリアが長い先輩にかなわない。追い抜くきっかけを得るには、地盤を固めてゆくしかない。この場合、前述の地縁などを基にした組織や、握手会などがそれにあたるだろう。メンバーとの直接のふれあいによって、政治家に握手されて熱心に語りかけられた有権者のように投票先を少し変更したと30代男性は言う。
「7位の島崎遥香のように『塩対応』と呼ばれるサービスが少ないメンバーもいますが、彼女はメディア露出が多く知名度が高いから可能なだけで、例外的な存在です。多くのファンは愛想がよいメンバーを選びます。握手会などでの“神対応”によって票を入れる先を変更することもあります。僕の押しメンは峯岸みなみなのですが、劇場公演後のハイタッチで手をぎゅっと握られて、5票のうち1票はチームKの小嶋真子に入れちゃいました(笑)」
ゆるキャラ総選挙も、今では自治体などの組織票を持たないキャラクターは上位に入賞できなくなったと言われる。基礎として組織票があり、その後、知名度によって人気票を獲得できたキャラクターが優勝している。総得票数が1位で15万票を超えたAKB総選挙も、ゆるキャラのように徐々にリアルな選挙に近付いているということか。