中国が平気で嘘をつき、その嘘を何度も繰り返すのは、相手を騙して戦いに勝つことを最上とする孫子の兵法に基づくものです。
『日本の存亡は「孫子」にあり』(致知出版社刊)の著者・太田文雄氏は、孫子の兵法を現在の中国共産党や人民解放軍が重要視し、国防大学でも教育の中核としているほか、2006年からは末端の兵士にも学ばせていると指摘しています。
中国は、オバマ政権の弱腰外交をチャンスと見て領土・領海を広げていますが、その戦略に変化が起きていることも見逃せません。7月中旬、前述の西沙諸島周辺での石油掘削活動を中断し、ベトナムのEEZ内から一時撤退しました。
その背景に国際社会の強い反発があります。5月、ミャンマーのネピドーで東南アジア諸国連合(ASEAN)が全会一致で中国の対ベトナム侵略に「深刻な懸念」を表明しました。中国への恐れからまともに批判することなど思いもよらなかったASEANが、大決断をしたのは画期的でした。
アメリカ下院も5月に中国の人権弾圧を非難する決議を採択、上院は7月、海洋侵略を続ける中国を非難する決議を可決しました。ASEAN諸国をはじめ国際社会で巻き起こった中国非難に直面して風向きが悪いことを察してサッと引き揚げたのです。国際社会が連携して対中攻勢を強めれば彼らも引かざるを得ないということがよく分かる事例です。
※週刊ポスト2014年8月15・22日号