しかし著名人が投げるのはまだわかる。たまに「○○株式会社の××さん」みたいな、普通のおじさんが投げているときがある。ファン代表かというと、さにあらず、深いワケがあった。
「球場に広告看板を出している大口スポンサーさんなんですよ。看板だしてもらう代わりに『1試合、始球式どうですか』みたいな営業があるんです」(元球団営業マン)
接待始球式やんけ! うわっ大人の世界って……でも、投げたくなる気持ちはわかるなあ。
ところで始球式の投球は、冒頭で紹介したような私たちが空目しがちな「ノーバン」投球とホームベースに届かずにワンバン、ツーバン、スリーバンしてやっと届くようなものもある。私たちがヤンヤと喝采を送るのはもちろんノーバン投球だが、始球式担当者にとってはそうでもないらしい。
というのは、私がある試合を取材していたときのこと。始球式に登場予定の小学生男子に球団職員がこんな注意をしていたのを耳にしてしまった。
「ストライク投げようとか思っちゃいけないから。インコースも絶対に投げないで」
バッターボックスの選手に当てられるのを極度に恐れていたのである。そんな小学生の球、向かってきてもプロの選手なら簡単に避けられるだろうに、夢のないこというなあと思っていたものだ。
「いやでもたまに、凄い球を投げる素人がいるんですよ」
というのは別のパリーグ元球団広報マン。
「女子中学生が投げるときがあって、油断して注意しなかったんです。そうしたらその子が130キロぐらいの綺麗なストレート投げて(笑)。あとから僕が上の方から『危ないだろう!』って怒られました」
いろんな大人の思惑が絡む始球式、どうやら無難に半ケツの女性タレントがワンバン、ツーバンの球を投げた方が、球団としても、私たちが空目して気まずい思いをしないためにも、よいようだ。