国際情報

中国で死体盗掘と密売が横行 「陰婚」と呼ばれる習慣のため

「陰婚」という言葉を聞いたことがある日本人はそう多くはあるまい。中国の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聰氏がレポートする。

 * * *
 一人の若き青年が不慮の事故で命を絶たれた――。中国では若くして他界した家族や親せきの亡骸を前に、嘆き悲しむ両親や兄弟たちの裏側で、葬式とは別にとり行われる「ある儀式」のために慌ただしく走り回る親戚や親族の姿が見られることがある。

 いったい彼らは何のために奔走しているのか。答えは、「結婚」だ。

 結婚と聞いて驚かない日本人がいるだろうか。なぜなら結婚するのは死んだばかりの若者であるからだ。もちろん、死んだばかりの若者に生前からの許嫁がいたわけではない。付き合っていた相手がいたわけでもないのである。

 仮にもし、死者に許嫁や交際中の相手がいたとしても、この結婚においては、そのことはまったく意味を持たない。なぜなら彼や彼女らが結婚する相手は、やはり若い死体だからだ。

 中国では一般に、こうした死者と死者の間でとり行われる結婚を「陰婚」と呼んでいるが、その呼称は「冥婚」や「鬼婚」、そして時には「冥配」と呼ばれるなど地方によって実にまちまちである。

「この風習は宗教というより何千年も続いている中国の土着の習慣なのです。もちろん農村で多いのですが、決して都会に無い問題ではありません。例えば、中国一の金持ちが集まる土地の一つである広東省などでは、『陰婚』の風習は根強く残っています。ですから彼らは、都会で死んだ死体をできるだけ人目のつかない田舎に移しているのです。

 中国で『陰婚』がこれほどなくならないのは、祖先の中に〝孤独な墓(弧墳)〟があると、子孫の発展、繁栄の妨げになると信じているからです。ですから、未婚の死体には生きている人々が勝手に結婚の相手を探してきて結婚させてしまうのです。そのための死体ですから、相手は誰でもよいのです」(北京の夕刊紙記者)

 こうして出来上がった「陰婚」後に異性の二つの死体を〝合葬〟することによって、やっと若き死者も成仏でき、一族の子孫の繁栄にも支障は取り除かれる。そして親戚一同みなホッと胸を撫で下ろすというのである。ちょっと信じ難い儀式であり、感覚だが、中国では大真面目にやられている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
リモートワークや打合せに使われることもあるカラオケボックス(写真提供/イメージマート)
《警視庁記者クラブの記者がカラオケボックスで乱痴気騒ぎ》個室内で「行為」に及ぶ人たちの実態 従業員の嘆き「珍しくない話」「注意に行くことになってるけど、仕事とはいえ嫌。逆ギレされることもある」 
NEWSポストセブン
「最長片道切符の旅」を達成した伊藤桃さん
「西国分寺から立川…2駅の移動に7時間半」11000kmを“一筆書き”した鉄旅タレント・伊藤桃が語る「過酷すぎるルート」と「撮り鉄」への本音
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱親方と白鵬氏
旧宮城野部屋力士の一斉改名で角界に波紋 白鵬氏の「鵬」が弟子たちの四股名から消え、「部屋再興がなくなった」「再興できても炎鵬がゼロからのスタートか」の声
NEWSポストセブン
環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(22)
《不敵な笑みでテロ組織のデモに参加》“環境少女グレタ・トゥンベリさん”の過激化が止まらずイギリスで逮捕「イスラエルに拿捕され、ギリシャに強制送還されたことも」
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン