ビジネス

タワーマンションで相続対策「落とし穴あり」と元国税調査官

 2015年1月1日から相続税法が改正される。基礎控除が4割もカットされ、最高税率も55%に引き上げられる。これまで6000万円以上の相続財産がなければ課税されなかったのが、3600万円以上の相続財産があれば課税されることになった。これを受けて、巷には多くの相続税対策本が出て、ビジネス書でも大特集が組まれている。ところが、これらの中には、落とし穴がたくさんあると指摘するのは『やってはいけない相続対策』(小学館)を上梓した元国税調査官の大村大次郎氏だ。その大村氏が警鐘を鳴らす。

 * * *
「高層タワーマンション節税」という言葉が、最近、相続関係の本などでよく見られるようになりました。タワーマンション節税の要旨は簡単にいえば、次の通りです。

――相続税の対象となる土地、建物の評価額は、国税庁が発表する路線価が基準となる。そして路線価は、一つのマンションでは一つの価格しかつかないことになっている。高層階のマンションと低層階のマンションは、価格は全然違うのに、広さが同じであれば、相続税の土地評価額は同じ。だから高層階のマンションを買えば、相続税が少なくて済むので節税になる――

 しかし、このタワーマンション節税にも、大きな落とし穴があります。

 相続税の対象となる土地の価格というのは、必ずしも路線価が基準になるとは限りません。相続税法では、土地の価格は時価で判定されるということになっています。路線価というのは、すべての土地の時価はなかなかわからない場合が多く、時価がわからないと相続税の課税ができなくなるので、便宜上、国税庁が時価に代わる基準としてつくっているに過ぎません。

 あくまで、相続税の対象となるのは「時価」なのです。高層階と低層階の価格が明らかに違っているにもかかわらず、路線価が同じだからといって、同じ評価額になるはずはないのです。

 実は、20年以上前の1993年には、最高裁で国税側が全面勝利した判決も出ています。その際の判決文では、次のようなことが理由とされています。

〈相続財産の評価においては、財産評価基本通達の定めにより評価されることが原則であるが、それによらないことが相当と認められるような「特別な事情」がある場合には、他の合理的な時価の評価方法により評価されることが認められている〉

 これはマンション1棟買いのケースでしたが、節税目的で高層タワーマンションを購入しても、それは「特別な事情」として判断されるということです。それにタワーマンションを利用した相続対策は、最近になって開発されたものではありません。あちこちでトラブルを起こしています。

関連キーワード

関連記事

トピックス

各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン
理論派として評価されていた桑田真澄二軍監督
《巨人・桑田真澄二軍監督“追放”のなぜ》阿部監督ラストイヤーに“次期監督候補”が退団する「複雑なチーム内力学」 ポスト阿部候補は原辰徳氏、高橋由伸氏、松井秀喜氏の3人に絞られる
週刊ポスト
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“最もクレイジーな乱倫パーティー”を予告した金髪美女インフルエンサー(26)が「卒業旅行中の18歳以上の青少年」を狙いオーストラリアに再上陸か
NEWSポストセブン
大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン
メキシコの有名美女インフルエンサーが殺人などの罪で起訴された(Instagramより)
《麻薬カルテルの縄張り争いで婚約者を銃殺か》メキシコの有名美女インフルエンサーを米当局が第一級殺人などの罪で起訴、事件現場で「迷彩服を着て何発も発砲し…」
NEWSポストセブン
「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年11月6日、撮影/JMPA)
「耳の先まで美しい」佳子さま、アースカラーのブラウンジャケットにブルーのワンピ 耳に光るのは「金継ぎ」のイヤリング
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン