芸能

NHK大河「花燃ゆ」 視聴率は出遅れ気味でも期待できるの評

 いわゆる「ツカミ」はどうか。ドラマの序盤、目先の視聴率だけでは測れないポテンシャルをどう見るか。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が2015年のNHK大河について分析した。

 * * *
 1月4日にスタートした NHK大河ドラマ『花燃ゆ』。 初回の視聴率は関東地区16.7%(ビデオリサーチ調べ)、「史上3番目の低さ」などと喧伝されていますが、いやいやどうして。数字なんかにとらわれず、期待をもって見続けたい。そう感じた初回ではなかったでしょうか。

 今回の大河ドラマは、吉田松陰の妹・文が主役。井上真央という紅一点の周辺には、松陰の伊勢谷友介、小田村伊之助の大沢たかお、久坂玄瑞に東出昌大、高杉晋作に高良健吾、入江九一に要潤……キラ星のようにイケメンが勢揃い。キャッチコピーは「幕末男子の育て方。」とか。NHK大河としては、かなりチャラいフレーズですが、中身はどうしてどうして。ドラマの骨格は太い。多少、筋立て優先のご都合主義に閉口しましたが、全体としては期待できそうな匂いがぷんぷん漂っています。

 理由として、3点あげられるのではないでしょうか。

【1】骨格がしっかりしていて、何がポイントかという「地図」が描けている

 兵学・吉田、儒学・小田村といった長州藩の立ち位置、海外と日本との関係性、公と個との距離感、幕末に本が持っていた価値と力、「何のために学問をするのか」といった哲学とテーゼ、妹・文と周囲の男たちの星座のような位置取り……。それぞれにすっきりと「地図」が描けている。だから説明もくだくだしない。幕末という時代の緊張感とドラマのシーンとが有機的につながっている、と感じさせてくれる。

【2】役者と演出が効いている

 たとえば、伊勢谷友介と大沢たかおが、「禁書」をめぐって議論するシーン。何が良いといって、互いの瞳がキラキラと光り、うっすら涙すら滲んでいたこと。言葉が言葉を超えて「魂の言葉」に転換している。「情感」が役者のリアルな身体から溢れ出ている。それを画面にいっぱいに映し出す。これってまさしく「テレビドラマの醍醐味」ではないでしょうか?

 もしかしたら、幕末の志士たちとはこんな風にピュアだったのか、と想像させる演出力。「イケメン」とか呼ばれている男優たちが、自分の存在を賭けて本気の勝負をかけている。チャラチャラした評判をぶっとばすくらいの気合いを入れ、互いに演技を競い合う。そんな緊張感を感じる現場に、今後の展開も期待が膨らみます。

【3】歴史のはざまに落ちていた、無名の女性が主人公

 書かれた「歴史」とはたいてい、戦いとその結果であり勝った側の価値観や視点が反映されるもの。そうした「太文字」の出来事の間に、実は、無数の人間ドラマが埋まっているのです。今回は明治維新を素材にするとはいえ、「太文字」のタイトルに寄りかからず、吉田松陰の影にかくれた妹の視点から、人々のドラマに挑もうとしています。

 私はふと、『篤姫』を思い出しました。島津家に生まれ徳川家に嫁ぎ、第13代将軍徳川家定の御台所となった、「無名」の女の生き様を描いたあの大河ドラマ。非常に興味深く見応えがあり視聴率も高く、人気を集めました。奇しくも、『篤姫』の原作者・宮尾登美子さんの訃報が届いたタイミングで『花燃ゆ』がスタート。どうか『篤姫』に迫り、それを超えていくようなドラマになっていって欲しい。

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン