国内

イラン人ラーメン経営者 いずれ故郷で店を出したいと夢持つ

「ルーツは中国だけれど、今やラーメンは日本のオリジナル料理。そのおいしさにハマってラーメン屋さんになってしまいました」

 イラン人のマスウド・ニコナムさん(46才)は東高円寺にある人気ラーメン店『Bia Bia』の経営者だ。店名はペルシア語で「welcome」を意味し、「おいで、おいで」というメッセージが込められている。1991年、イラン・イラク戦争が終結し、職を求めて日本へ出稼ぎにやってきた。

「最初は物に印字をする会社に就職しました。仕事場は神奈川県・川崎で、駅に立ち食いのラーメン屋があったんです。お客さんは食券を買ってラーメンを食べていたけれど、それが何かわからなかった。『みんな何してる?』『何を食べている?』と毎日研究して、お店へ入るまでに3年かかったよ(笑い)。

 初めて食べたら、これがおいしくて! 後で知ったけれど、しょう油味で昔ながらの東京ラーメンだった。イランでは麺は麺、スープはスープで食べる。それに麺はマカロニに似たパスタ系。ラーメンはまさに未知の食べ物でした」(マスウドさん・以下「」内同)

 以来、残業で出前を取る時には必ずラーメンを注文。そして1999年に世田谷へ引っ越した際、募集広告をきっかけにとんこつラーメンの店で修業を始めた。

「仕事は現場で見て体で覚えて3日で朝の仕込みを任されました。でも日本語はわからないし、恥ずかしくてお客さんに『いらっしゃいませ』と言えず、店長に『大きな声で』と怒られました。思えば、それがいちばんの苦労だったかな」

 とんこつラーメンの後は、青物横丁の家系ラーメン、そして芦花公園で米国人が経営する創作ラーメン屋『アイバンラーメン』で修業をした。

「アイバンさんが、『あなただったら(独立)できるよ』と声をかけてくれたのが心に残っています。お互い外国人だったので、自分のラーメンを作りたい気持ちをよく理解してくれた」

 2012年に独立。極細の麺は自家製だ。スープは大山地鶏の丸鶏と6種類の魚介系煮干しをじっくりと煮込む。一杯750~1000円で季節ごとの限定メニューなども用意する。

「私のラーメンは、自分の歴史が詰まっている。修業した店の好きなところを集めて、自分なりの個性を加えています。無添加で飽きのこないシンプルなスープもそう。40才を過ぎたら、こってりした豚骨はきついから(笑い)」

 マスウドさんには夢がある。

「いずれは故郷で『Bia Bia』を出したいんです。でもイランは宗教上、豚が食べられませんから母国の食材を使ってね」

 日本での経験を生かし、祖国の食文化に合う独自のスープを作りたい。そう夢見て、楽しげに頭を悩ませている。

※女性セブン2015年1月22日号

関連記事

トピックス

真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
国内統計史上最高気温となる41.8度を観測した群馬県伊勢崎市。写真は42度を示す伊勢崎駅前の温度計。8月5日(時事通信フォト)
《猛暑を喜ぶ人たちと嘆く人たち》「観測史上最高気温」の地では観光客増加への期待 ”お年寄りの原宿”では衣料品店が頭を抱える、立地により”格差”が出ているショッピングモールも
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト
離婚を発表した加藤ローサと松井大輔(右/Instagramより)
「ママがやってよ」が嫌いな言葉…加藤ローサ(40)、夫・松井大輔氏(44)に尽くし続けた背景に母が伝えていた“人生失敗の3大要素”
NEWSポストセブン
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
【観光客が熊に餌を…】羅臼岳クマ事故でべテランハンターが指摘する“過酷すぎる駆除活動”「日当8000円、労災もなし、人のためでも限界」
NEWSポストセブン
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《金メダリスト・北島康介に不倫報道》「店内でも暗黙のウワサに…」 “小芝風花似”ホステスと逢瀬を重ねた“銀座の高級老舗クラブ”の正体「超一流が集まるお堅い店」
NEWSポストセブン
二階堂ふみとメイプル超合金・カズレーザーが結婚
二階堂ふみ&カズレーザーは“推し婚”ではなく“押し婚”、山田美保子さんが分析 沖縄県出身女性芸能人との共通点も
女性セブン
山下美夢有(左)の弟・勝将は昨年の男子プロテストを通過
《山下美夢有が全英女子オープンで初優勝》弟・勝将は男子ゴルフ界のホープで “姉以上”の期待度 「身長162cmと小柄だが海外勢にもパワー負けしていない」の評価
週刊ポスト
夏レジャーを普通に楽しんでほしいのが地域住民の願い(イメージ)
《各地の海辺が”行為”のための出会いの場に》近隣住民「男性同士で雑木林を分け行って…」 「本当に困ってんの、こっちは」ドローンで盗撮しようとする悪趣味な人たちも出現
NEWSポストセブン
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《北島康介に不倫報道》元ガルネク・千紗、直近は「マスク姿で元気がなさそう…」スイミングスクールの保護者が目撃
NEWSポストセブン
娘たちとの関係に悩まれる紀子さま(2025年6月、東京・港区。撮影/JMPA)
《眞子さんは出席拒否の見込み》紀子さま、悠仁さま成年式を控えて深まる憂慮 寄り添い合う雅子さまと愛子さまの姿に“焦り”が募る状況、“30度”への違和感指摘する声も
女性セブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者が逮捕された
「ローションに溶かして…」レーサム元会長が法廷で語った“薬物漬けパーティー”のきっかけ「ホテルに呼んだ女性に勧められた」【懲役2年、執行猶予4年】
NEWSポストセブン