芸能

雨宮処凛氏 女性は輝きなんか求めていない、欲しいのは安心

 作家で、「反貧困ネットワーク」副代表を務める雨宮処凛さん(39才)。若者の生きづらさや、不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組む彼女に「これだけは言っておかなければ気がすまない!」という女の正論を尋ねた。

 * * *
「女性が輝く日本へ」「2020年までに女性管理職を30%に」という目標を掲げていた安倍政権が、先の総選挙で圧倒的な支持を受けた形になりました。しかし今の政策ですべての女性が幸せになれるとは、けっして思えません。

 安倍首相が掲げるのは、ほんの一握りの「勝ち組」女性への政策です。正社員でスキルがあって、結婚にも子育てにも前向きなスーパーウーマン。大半の女性たちは、そんな人たちではありません。

 総務省統計局の『就業構造基本調査』(2012年)によれば、働く女性の57.7%が非正規社員なのです。

 最近、私が会ったのは、非正規で鉄道会社の売店で働く60才で未婚の女性です。時給1000円で手取りは月にわずか12万円。正社員と同一労働をしているにもかかわらず、一方はどんどん昇給していき、彼女は昇給もなければボーナスもない。自分たち非正規社員がいなければ仕事が回らないのに、あまりにも待遇が差別的で「なんとかしてほしい」と訴えていました。

 シングルマザーも厳しい状況です。ダブルワーク、トリプルワークは当たり前。30代半ばのある女性は、夫のDVが原因で離婚しました。小学生の子供2人を抱えて、昼はお弁当屋で、夜はスナックで働いています。それでも月収は20万円にも満たない。

 彼女は一度、新しい恋人ができそうになったのですが、その恋は実りませんでした。電車賃がなくてデートの場所まで行けない。行き着けても割り勘だとデート代も払えない。「お金がなくて恋愛もできない」と語っていたのが印象的でした。

 新しい人とうまくいって再婚できたら生活は安定する可能性があるのに、そこまで到達できないのです。

 彼女たちが共通して話すのは「せめて手取りが、あと月に2、3万円多ければなんとかなる」ということ。国税庁の『民間給与実態統計調査』(2013年分)では、非正規の女性の平均年収は143万円。日本の貧困線(生活に必要なものを購入できる最低限の収入)は年収122万円です。貧困のボーダーラインをわずか20万円ほどしか上回っていないレベルで生活せざるをえないことがわかります。

 そういう女性たちは日々の暮らしに手いっぱいで、恋愛や結婚に目を向ける余裕がないのです。少子化対策が喫緊の課題であるにもかかわらず、安倍首相は待機児童の解消や仕事と育児の両立を声高に唱えるだけ。底辺の状況が全くわかっていない。自分は3世のお坊ちゃま育ちで何不自由なく生活してきたから、底辺にいる女性の現実がわからないのだと思います。そういう人たちの声を直に聞かないで、エリート女性たちの声ばかりを聞いているのです。

 女性活躍推進法案を見て、私たちのためにやってくれた、と思っている人は誰もいないのではないでしょうか。むしろ同じ女性なのに、そこから排除されて相手にされていないと疎外感を持った人が多い。

 安倍首相の「上から目線」も気になります。声高に「女性活用」を口にしていますが、男性に対しては「男性活用」とは言わない。女性をわざわざ活用してやるんだ、という物いいです。多くの女性が求めているのはそんなものではない。

 結婚しないでも、非正規で働いていても、それなりに安心して地に足をつけて暮らしていける社会を求めているのです。

※女性セブン2015年1月22日号

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