スポーツ

吉田義男氏 王貞治対策として二塁ベース上で両手を振り回した

 読売巨人軍の9年連続日本一が始まる前年、1964年のセ・リーグ優勝は阪神タイガースだった。1961~1968年に阪神の指揮をとった藤本定義監督は、巨人に対する選手の苦手意識を取りはらうことに腐心したという。俊足巧打と守備範囲の広い華麗なプレーで“牛若丸”と呼ばれ17年にわたり阪神の主力を務めた吉田義男氏が、本塁打新記録を打ち立てたころの王貞治対策として、藤本監督が編み出したユニークな戦術の思い出を語った。

 * * *
 藤本監督は甲子園で巨人が試合前の練習にグラウンドへ入ってくるとき、入り口で仁王立ちで待ち構えるんです。すると巨人ナインはもちろん、あの川上(哲治)監督までもが藤本さんに挨拶をしながら入ってくる。実は藤本さんは、川上さんが巨人に入団した時の監督やったんですね。

 そこで藤本さんはわざと、

「哲ゥ!」

 と大きな声をかける。それも川上さんに向かってではなく、ベンチにいる僕ら阪神の選手たちに聞こえるように叫ぶんです。こうして巨人を「上から目線」で見ることで、僕らの巨人コンプレックスを拭い去ろうとしていたんですね。

 藤本さんは昔から“伊予ダヌキ”(藤本は愛媛県出身)といわれた勝負師。「巨人は怖くない」という意識を根づかせる藤本さんの策があったから、1962年と1964年は優勝できたといえるかもしれません。

 策といえば1964年にはこんなことがありました。この年は王が55本塁打の新記録をマークした絶頂期。後楽園での試合で、藤本監督からこんな命令を受けました。

「王が打席に入ったらお前が二塁ベースの上に立て。守らなくていいから、両手を振り回して王の目をくらませろ」

 破れかぶれの作戦ですが、当時は広島が「王シフト」を編み出した頃で、各チームあの手この手で王を抑えようとした時でした。

 結果? 打たれましたわ(笑い)。

 阪神は巨人戦ではよく打ったが、巨人にはそれ以上に打たれました。実は「伝統の一戦」といっても、阪神は対巨人通算777勝999敗67分け(2014年終了時点)と圧倒的に分が悪いんです。要は阪神が優勝したシーズンというのは、巨人に勝ったシーズン。対等に戦えないとリーグ優勝はできないから「打倒巨人」になるわけです。

※週刊ポスト2015年2月13日号

関連記事

トピックス

雅子さまが三重県をご訪問(共同通信社)
《お洒落とは》フェラガモ歴30年の雅子さま、三重県ご訪問でお持ちの愛用バッグに込められた“美学” 愛子さまにも受け継がれる「サステナブルの心」
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
「とにかく献金しなければと…」「ここに安倍首相が来ているかも」山上徹也被告の母親の証言に見られた“統一教会の色濃い影響”、本人は「時折、眉間にシワを寄せて…」【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
マレーシアのマルチタレント「Namewee(ネームウィー)」(時事通信フォト)
人気ラッパー・ネームウィーが“ナースの女神”殺人事件関与疑惑で当局が拘束、過去には日本人セクシー女優との過激MVも制作《エクスタシー所持で逮捕も》
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト/目撃者提供)
《前橋・小川市長が出直し選挙での「出馬」を明言》「ベッドは使ってはいないですけど…」「これは許していただきたい」市長が市民対話会で釈明、市議らは辞職を勧告も 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン