芸能

火野正平 台本を貰ったら、どうやれば面白くなるかを考える

 50年を超える役者生活を送ってきた火野正平には個性的な人というイメージが強いだろう。その印象を強くしているもののひとつは、「必殺」シリーズなど人気のテレビ時代劇にいくつも出演しながら、鬘(かつら)をつけず裾をひるがえすとマントのようにはためく衣装を着ているからだ。面白いと思う時代劇について火野が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏の週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』からお届けする。

 * * *
「必殺」シリーズ、『斬り抜ける』『長崎犯科帳』『長七郎江戸日記』など、1970~1980年代のテレビドラマで火野正平は「情報屋」の役を演じてきた。頭髪は地毛を長く伸ばし、衣装は長く厚めの羽織という独特のスタイルをいつもしており、観る側に強烈な印象を残している。

「俺は、時代劇で鬘を取った役者の走りなんじゃないかな。最初は『半がつら』というのを付けて地毛と結んでいたんだけど、飯の時とかに取るから、しょっちゅう食堂に忘れてきちゃうんだ。その度にスタッフが取りに行ってたから、『もうお前、かぶるな。地毛をくくれ』ということになったんだよね。

 あと、立ち回りをしていてすぐ飛んでいっちゃうんだよ。暴れるだけだったから。武士の立ち回りじゃないから、喧嘩でいいと思ってやっていたんだ。若い頃、喧嘩は上手かったんだよ。間合いをとって刀をよけるんじゃなくて、刀が振り下ろされる前に相手に飛び込むというね。

 衣装は、あれが粋だと思っていたんだ。走ってばかりの役だから、走ると風で裾がヒラヒラとなって可愛くなるからね。

『斬り抜ける』の最後の方は寒いから毛布を被ったまま出たんだよ。『南蛮渡来でええやないか』って。あの頃の時代劇には、そういう自由さがあったよね。

 俺は『当時のことなんて、誰も知らん』と思ってるから。『そんな奴もおったやろう』って。

 今は、そういうことはなかなかできないな。一つの撮影所での付き合いが長かったから、現場のみんなと仲間になって『面白いことをやろう』ってみんなで思えるようになったんだよ」

 京都の時代劇の撮影現場を取材すると、火野がスタッフたちを誘って飲み会を開く姿をよく見かける。そうした親しみやすさもあり、彼がいるだけで現場の雰囲気が和らぐことが多い。

関連キーワード

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン