1か月後、当時14歳だったAが逮捕され、同年2月、3月に起きた連続女児殺傷事件もAの犯行だったと判明する。
Aは2004年3月の仮退院まで6年半、関東医療少年院で更生・治療を受けた。森氏がAと接する機会を持ったのは、Aが入所して3年を少し過ぎた頃である。
「当時、彼からマス目いっぱいに几帳面な文字で書かれた短編小説を渡され、“感想をいってもらえませんか?”と請われました。一読して内容が理解できるような代物ではありませんでしたが、青春の虚しい心象と、決定的な喪失感が独特の文体によって書かれていると感じました」(森氏)
18歳の青年Aが書いた小説の一部を改めて抜粋する(以下、原文ママ)。
《題 愛想笑いに手には名刺を
『桜木町』、『桜木町』。僕の横から現れた彼女に風太郎は書きかけの手帳を慌てて仕舞い込む。彼女の口許には絶えず微笑が刻み込まれているがまだ、十代のあどけなさが残っている。
「この乗り物は、桜台二丁目まで行きますの?」はっと我に返った僕は職業心が芽生える。まだ間もない身ではあるが。
「奇遇ですね、私の地本なんです」》
奇妙なタイトルもさることながら、内容も要領を得ない。誤字も散見された。
※週刊ポスト2015年7月3日号