18年ぶりに古典落語を披露した桂文枝


 繁昌亭のほど近くに日本一長いといわれる天神橋筋商店街がある。高座の前、文枝はちょくちょくここを訪れる。

「あら師匠、お元気ですか」

「まぁぼちぼちですなぁ」

 街の人たちの呼びかけに応じる姿には貫禄と愛嬌が同居していた。

 そして繁昌亭に隣接する大阪天満宮に必ず立ち寄り、手を合わせる。

「願い事はもちろん上方落語の発展と繁栄ですな」

 そう語るだけあって後進の育成にも熱心だ。出番前など、時間の空きを見つけては弟子を呼んで稽古をつける。

 文枝を語る上で欠かせないのが、テレビでの活躍だ。この7月、1971年から『新婚さんいらっしゃい!』(テレビ朝日・朝日放送系)の司会を務め続けたたことで、同一司会者によるトーク番組の最長放送を達成したとしてギネス世界記録に認定された。

「これまで無我夢中でやって来ました。運も実力のうちいいますけど、それだけやったらあかん。運があって努力があって、実力がついてくる。そうした気持ちがないとあかん思いますな」

 そんな努力の上に完成した六代文枝版『抜け雀』。オチもオリジナルとは少し違っているという。

「どう変わっているかって教えろって? んな、あほな。そこはご自身の耳で確かめてください」

◆桂文枝(かつら・ぶんし):1943年、大阪府堺市生まれ。上方落語協会会長。関西大学卒業後に桂小文枝に入門。桂三枝として創作落語の世界を広げる一方、テレビ・ラジオでも活躍。12年に上方落語の大名跡・桂文枝を襲名し、今春に旭日小綬章を受章。8月9日には東京・神保町花月で「桂文枝プロデュース~戀する落語会パートXIV~ギネスの文枝も“笑(しょう)ぶ”する」を公演。

■撮影/江森康之

※週刊ポスト2015年7月31日号

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