国内

「声なき人々の苦しみに寄り添う」天皇陛下がお考えになる責務

 昭和の時代の過ちを繰り返さないという意志と、「声なき人々の苦しみに寄り添う」という今日の姿勢を持たれている天皇陛下。2011年3月11日に発生した東日本大震災でも、それが浮かび上がった。

 地震発生から5日後、陛下は被災者や国民へのお言葉をビデオメッセージで述べられた。そしてそれは「平成の玉音放送」とも称された。

 さらに、2011年12月16日、当時の野田佳彦・民主党政権が「原発事故収束宣言」をした2週間後、陛下は次のようなお言葉を発表されている。

「原発事故によってもたらされた放射能汚染のために、これまで生活していた地域から離れて暮らさなければならない人々の無念の気持ちも深く察せられます」(2012年1月1日/新年の感想)

 このお言葉について、陛下のお言葉を綴った『戦争をしない国』(小学館刊)の著者である矢部宏治さんは「異例のこと」だと分析する。

「国家の方針として、『原発事故収束』と宣言しているところに、あえて放射能汚染について触れるというのは、並大抵のお心持ちではできません。明仁天皇は、1984年の結婚25周年の記者会見で『政治から離れた立場で国民の苦しみに心を寄せたという過去の天皇の話は、象徴という言葉で表すのに最もふさわしいあり方ではないかと思っています』と語っておられます。

 広島、長崎の被爆者で今なお苦しんでおられる人、福島で声をあげられない人。このような、『声なき人々の苦しみに寄り添うこと』を象徴天皇の最大の責務と考えておられるのでしょう。大手メディアは、こうした原発関連のお言葉について報じませんでしたが、これこそ明仁天皇メッセージの白眉だと、私は思います」(矢部さん)

 実際、陛下は翌年(2013年)も、その翌年(2014年)も、そして今年も、新年の感想で、「東日本大震災からは4度目の冬になり、放射能汚染により、かつて住んだ土地に戻れずにいる人々や仮設住宅で厳しい冬を過ごす人々もいまだ多いことも案じられます」(2015年1月1日/新年の感想)と言われたように、必ず福島原発事故について触れられているのだ。矢部さんは言う。

「人の心を打つメッセージは、大きな苦悩の中から生み出されます。15才の誕生日に深い闇を体験し(注釈)、そこから深い思索を積み重ねてこられた明仁天皇。深い知識と現実の行動がどちらも伴っているからこそ、その言葉は私たちの胸に強く響くのです」

(注釈:東京裁判で起訴されたA級戦犯7名が、明仁天皇の15才の誕生日に処刑された)

 この道は、いつか来た道ではないか──誰もが漠然と不安を抱えたまま、私たちは疑問を感じつつもなすすべがなく、先が見えないどこかに突き進んでいる。

 今こそ、天皇陛下のお言葉に、私たちはもう一度耳を傾けなければいけない。

※女性セブン2015年7月30日・8月6日号

トピックス

キャンパスライフをスタートされた悠仁さま
《5000字超えの意見書が…》悠仁さまが通う筑波大で警備強化、出入り口封鎖も 一般学生からは「厳しすぎて不便」との声
週刊ポスト
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン
折田楓氏(本人のinstagramより)
「身内にゆるいねアンタら、大変なことになるよ!」 斎藤元彦兵庫県知事と「merchu」折田楓社長の“関係”が県議会委員会で物議《県知事らによる“企業表彰”を受賞》
NEWSポストセブン
エライザちゃんと両親。Facebookには「どうか、みんな、ベイビーを強く抱きしめ、側から離れないでくれ。この悲しみは耐えられない」と綴っている(SNSより)
「この悲しみは耐えられない」生後7か月の赤ちゃんを愛犬・ピットブルが咬殺 議論を呼ぶ“スイッチが入ると相手が死ぬまで離さない”危険性【米国で悲劇、国内の規制は?】
NEWSポストセブン
笑顔に隠されたムキムキ女将の知られざる過去とは…
《老舗かまぼこ屋のムキムキ女将》「銭湯ではタオルで身体を隠しちゃう」一心不乱に突き進む“筋肉道”の苦悩と葛藤、1度だけ号泣した過酷減量
NEWSポストセブン
横山剣(右)と岩崎宏美の「昭和歌謡イイネ!」対談
【横山剣「昭和歌謡イイネ!」対談】岩崎宏美が語る『スター誕生!』秘話 毎週500人が参加したオーディション、トレードマークの「おかっぱ」を生んだディレクターの“暴言”
週刊ポスト
“ボディビルダー”というもう一つの顔を持つ
《かまぼこ屋の若女将がエプロン脱いだらムキムキ》体重24キロ増減、“筋肉美”を求めて1年でボディビル大会入賞「きっかけは夫の一声でした」
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン