ビジネス

元世界6位富豪日本人「お金はあり過ぎても良いことはない」

かつて「世界6位の富豪」だった麻布自動車会長の渡辺喜太郎氏

「かつて『世界6位の富豪』だったと言われても、嬉しくありません。その後に訪れたショックのほうが大き過ぎて、当時の感慨なんてキレイに吹き飛んでしまっているんだから(笑い)」

 こう話すのは、1990年に米『フォーブス』誌の「世界の長者番付」6位に入った麻布自動車会長の渡辺喜太郎氏(81歳)だ。

 渡辺氏が同社を設立したのは1956年、22歳の時だ。新車のオートバイ販売からスタートし、国産中古車や高級外車販売、不動産業へと時代の変化に合わせて業態を転換。業績も飛躍的に伸びていった。

 1980年代に入ると、同社は最盛期を迎える。港区内に165か所を超える土地・建物を所有したほか、アラモアナ・ホテルなどハワイの6つの高級ホテルを買収。銀行からの融資は1000億円を超えた。

「正月は、女優の森光子さんや泉ピン子さん、俳優の高橋英樹さんなど多くの芸能人が、私のハワイのホテルに集まって年越しするのが恒例でした。アラモアナ・ホテルを買った後、ダイエーの中内功さんから『俺も欲しかった。1000億円出すから俺に売れ』って悔しがられたのを覚えています」

 芸能人から経営者まで、当時の渡辺氏の交友関係は多岐にわたった。企業人では、三越百貨店の岡田茂・社長、セゾングループの堤清二・代表、三井信託銀行(現・中央三井信託銀行)の中島健・社長らと深く交際した。

 だが、バブル崩壊で状況は一変。不動産価格が下落し、所有不動産を担保に銀行から融資を受けていたため、担保割れが続出。銀行は同社資産を不良債権と見なして次々にRCC(整理回収機構)に売り払った。

 2007年、渡辺は会社更生法の適用を申請する。「さすがに、この時は悔しくて泣いた」という。

 当時の負債総額は5648億円。会社整理に決着が付くまで20年を要した。その間、RCCから告発され、強制執行妨害や公正証書原本不実記載で2度逮捕された。

「165以上あった港区内の資産は全て売り払いました。今は、子供たちを応援する毎日です。都内に15個ほどビルを所有しているので、年間の賃料収入が10億円程度ある。まァ、80年代は賃料収入だけで年間700億円以上あったのですがね……。

 私の原点は戦災孤児ですから、裸一貫に戻ることは全く恐くありません。ただこれまでの経験で、お金はなければ苦労しますが、あり過ぎても良いことはないことを学びました」

 かつて、世界で6番目の大富豪だった男の言葉は重い。

撮影■ヤナガワゴーッ!

※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン