「“山”が必須条件ならば栃木県日光市のいろは坂がいいと思います」
そう提案するのは、『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』(角川新書)の著者で、スポーツライターの酒井政人氏だ。
「いろは坂では『いろは坂女子駅伝』が開催されている。標高410mの日光だいや川公園をスタートして、第一いろは坂を駆け上がり、標高1289mの日光二荒山神社がゴールです。奇しくも総距離23.4kmは箱根の5区とほとんど同じなんです。標高差880mも、箱根とほぼ同じです。
例えば『箱根駅伝』を『日光いろは坂駅伝』に衣替えするなら、新年のイベントらしく参拝客で賑わう栃木県の佐野厄除け大師をスタートして国道50号線を東に走り、その後、日光街道を北上。宇都宮を過ぎてから県道248号線に入り直進すれば日光だいや川公園に到着します。
ここまでの約85kmを4区に分ける。そして第5区はいろは坂を登って往路のゴール。翌日に同じコースを折り返します」
これなら山の醍醐味を残せそうだ。他にも関東には神奈川の「丹沢」や東京の「高尾山」など、登山を含むコースも考えられる。日本ランニング協会代表理事の小林渉氏が言う。
「丹沢や高尾山も素晴らしいコースだと思いますが、どちらも標高差が箱根ほどはありません。箱根駅伝の魅力は15kmほど登り続ける、あるいは下り続けるというダイナミズムです。富士山の3合目くらいまで登って、そこを往路のゴールにするというコースもありだと思います」
富士スバルラインを3合目まで登れば、標高差は800mほどで箱根の山登りと同じくらい。全体のスタート・ゴール地点をどこにするかは考えなければならないが、これも検討の価値があるかもしれない。
山の神・神野は開催を危ぶむ声に「自分たちがどうしたいかは二の次、地元の安全、安心が第一です」とコメントしているが、やっぱり箱根駅伝ファンとしては来年も「山の神」の降臨を見たいのです!
※週刊ポスト2015年10月16・23日号