「やっていることは、今もデビュー当時も変わらない。好きな歌を作って、ギターを弾いて、歌う。マイクスタンドがあったら回すしね。違うのは、変に構えず、今あるように、そこにいるということを心掛けていること。
俺にとっては、こうやって人と喋っていることも、飯を食べることも、歌を歌うことも、陶芸をすることも、息を吸って吐くのと同じ自然体でのことなんです。歴史に名前を残したいとは思わないし、俺が死んだ時に、誰かが、『世良さんって、真っ白なキャンバスにずっと一本の線を引き続けて、突然、いなくなっちゃったよね』といってくれればそれでいいと思っているんで」
ライブでは、デビュー当時と少しも変わらない不敵な笑みを浮かべてステージに向かった世良公則は、今も現在進行形。枠のないキャンバスに、右肩上がりの線を引き続けている──。
◆世良公則(せら・まさのり):1955年、広島県生まれ。1977年、『あんたのバラード』(世良公則&ツイスト)でデビュー。1978年『銃爪』でオリコンシングル年間1位を獲得。1981年ツイスト解散後はソロでの音楽活動を開始するほか、俳優としても活躍し第10、22回日本アカデミー賞助演男優賞を受賞。アニバーサリー・イヤーとなった今年、ライブで全国を回っている。
取材・文■工藤晋 撮影■アライテツヤ
※週刊ポスト2015年11月6日号