しかも、「役に立たねえヤツばっかりだな!」「お前みたいなヤツがテレビをおかしくしているんだ!」などとスタッフを罵倒するだけでなく、ときどき「でも私はお前のこと嫌いじゃねえぞ」と小さなフォローを入れることで“愛のある毒舌”という印象にまとめています。
丁寧語と毒舌を出し入れした素人イジリは、明石家さんまさんや笑福亭鶴瓶さんの話術に似たものがありますし、「相手を尊重しながら小バカにする」スタイルは、綾小路きみまろさんが醸し出すムードに近い気もします。
私はマツコさんとお会いしたことがありますが、サービス精神が豊富な上に、とても慎重で手堅いところのある人。生放送の『5時に夢中!』では他の番組よりも言葉を選びながら話しているのがわかりますし、あらゆることにアンテナを張って準備する姿勢も、金銭感覚や将来に対する不安なども、ブレイク前と変わっていません。そんな慎重な一面があるからこそ、タレント、素人、スタッフと、相手に応じた言葉を使い分けられるのではないでしょうか。
誰とも絡めるスキルと慎重さがある上に、「新CM女王!?」と言われるほど好感度が高く、マツコさんが絶賛すると商品が売れる“マツコ売れ”という現象もあるくらいですから、もはや性別を超えた「みんなのマツコ」というポジションについている気さえします。番組スタッフから見ても、1人で番組を回せるマツコさんほどコスパのいいタレントはいないため、今後も活躍の場は広がり、さらなる進化が見られるかもしれません。
【木村隆志】
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者。テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの聴き技84』(TAC出版)など。