このセリフに、新次郎の魅力、そして『あさが来たブーム』の本質が込められている。なぜ、ここまで新次郎に惹きつけられるのか? 朝ドラ評論家の田幸和歌子さんは、AKB48が歌う主題歌にも、その心理が隠されているという。
「サビに入る前の、《やりたいこと好きなように自由にできる夢》という歌詞などが、象徴的です。社会で女性の活力が求められ、結婚しても、出産しても、仕事を持ち続けることが当たり前となった今、女性がやりたいことを思う存分やって、それを男性が支えてくれるのが、働く女性にとってのひとつの理想形になっている。
明治の時代に、社会に出ようとするあさの行く手には、それを阻もうとするいくつもの障害が出てきますが、新次郎がそれを涼しい顔でどんどん取り除いていきます。その様はどこか、黙って手を差し伸べる母のようでもあり、ガンガン進んでいく社長をサポートする秘書のようでもある。細かいところに目配りができる男性は、今の時代の女性にこそ求められている」
近藤正臣(73才)が演じる新次郎の父親・正吉も、新次郎に負けず劣らずの人気だったが、それはやはり、あさの行動力を買い、温かく見守ってくれた心強い存在だったからだろう。
「新次郎も、正吉も、家庭の外に出て働く女性を支えられる魅力を持っている。女性が社会に出ることを応援し、本人に足りない部分をさりげなくフォローしてくれる男性を求めている女性はこんなにも多いのだと、彼らの人気から実感します」(田幸さん)
※女性セブン2016年1月7・14日号