芸能

NHK大河『真田丸』 男優が牽引も女優がぶち壊しとの評

 新作大河はどうやら順調に船出した様子である。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 2回目で視聴率20%を超え、絶好スタートのNHK大河ドラマ『真田丸』(日曜午後8時)。20%超えは3年ぶりとあって、制作陣も祝福ムード。と聞くとこれまで無関心だった層の中にも、「とりあえずチャンネルをあわせてみようかな」という流れが出てくるはず。

 さて、これから見続ける人が増えるのか、それとも……? スタートダッシュで「気になった3つの点」をあげてみたい。

●その1 もろ手をあげて絶賛したい点

 男優たちの力がドラマの牽引力そのものになっている。筆頭は、主役をさしおいてまず、出色の出来の平岳大。武田家当主を継いだ信玄の息子・勝頼を演じ、鮮烈な印象を残した。

 偉大な父・信玄に対する息子としての苦悩。裏切られ追いつめられて自刃するシーンは、ピンと張りつめた緊張感に一瞬たりとも目が離せなかった。

 その静かなたたずまい。横顔に優しさ強さともろさ、悲哀、葛藤と苦しみ、といったものが交差し凝縮されていた。たった2回で姿を消してしまった展開に「平ロス」の声が飛び交うほど。

 もう一人。目が惹きつけられてしまうのが、真田信繁(幸村)の父・昌幸演じる草刈正雄だ。

 戦国武将の危機感と飄々とした個性的キャラをあわせた「食えぬやつ」の存在感が、ぐんと際立つ。ここまで「見たくなる」草刈正雄、失礼ながら初めてだ。やはり二枚目役者だけでは終わらなかった。

 主役・真田信繁を演じる堺雅人は、徹底してとぼけた存在を演じぬく力量がある。そうである以上、兄役・大泉洋は、いつものおちゃらけを封印。大泉が真面目さをきちんと持続できれば、兄弟のバランスは保てる。そこも見所だ。

●その2 残念な点

 男優陣の絶妙な演技と配役のバランスを、残念ながら思い切りぶち壊しているのが女優陣。その筆頭が、信繁の母を演じる高畑淳子。

 妙に裏返った声色でおどけた演技。大げさにまくしたてるあたり、勘違い。まさか、いい年した女優が目立ちたい願望で空回り? ありえない。

 姉役の木村佳乃も残念。「でしょ?」「ねえ~」と現代口語調セリフを貫く、こちらも三谷ワールドの尖兵役。

 そうした女優陣の一見「コミカル」な演技は、残念ながらドラマを壊す方向で作用している。役者も演出のねらいそのものも、滑っている。そもそも小手先で笑わせようというこざかしい演出は、大河ドラマにはいらないのでは。

 有働由美子アナのナレーションも、本人キャラが目立ちすぎ。入り組んだ歴史背景を解説するナレーションは、一歩引いて自分の存在感を薄め低音に抑えるくらいでちょうどいい。もちろんそんなことはプロとしてわかりきっているだろうけれど。張り上げる声を聞くたびに顔が浮かんでしまうのは、本人の意図はいざ知らず、マイナス。

 つまり、脚本家・三谷幸喜の歴史へのこだわりと遊び心の良い部分が主に男優陣に現れていて、ウケ狙いすぎの難点の方が今のところ女優陣に出ているのでは。

関連記事

トピックス

神田正輝の卒業までに中丸の復帰は間に合うのか(右・Instagramより)
《神田正輝の番組卒業から1年》中丸雄一、『旅サラダ』降板発表前に見せた“不義理”に現場スタッフがおぼえた違和感
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)の“過激バスツアー”に批判殺到 大学フェミニスト協会は「企画に参加し、支持する全員に反対」
NEWSポストセブン
主人公・のぶ(今井美桜)の幼馴染・小川うさ子役を演じた志田彩良(写真提供/NHK)
【『あんぱん』秘話インタビュー】のぶの親友うさ子を演じた志田彩良が明かすヒロインオーディション「落ちた悔しさから泣いたのは初めて」
週刊ポスト
寮内の暴力事案は裁判沙汰に
《いまだ続く広陵野球部の暴力問題》加害生徒が被害生徒の保護者を名誉毀損で訴えた背景 同校は「対岸の火事」のような反応
週刊ポスト
どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン