芸能

『あさが来た』応接室はマッサン社長室 セット担当者の工夫

加野銀行の門の素材は塩ビの水道管

 人気NHK連続テレビ小説『あさが来た』。その世界観を作り出すためのファーストステップとして重要なのがセットだ。撮影は、ほぼすべて、NHK大阪の200坪のスタジオで行われている。そこでセットを作っているのは、装置チーフ・市川康志さん(つむら工芸)だ。いわゆる「大道具」と呼ばれる市川さんは、どんな思いを持って『あさが来た』のセットを作っているのだろうか。話を聞いた。

 * * *
 セットを作ることは、世界観を作ることだと思っています。ぼくたちのセットを見て、小道具さんが飾りを作っていく。その次に、衣装さんが着物や洋服を作っていく…最後には演者さんがどう演じるかにつながっていく。

 世界観というバトンを作って渡していくんです。最初のランナーであるぼくたちの責任は重大です。だから、ぼくたちが手を抜いたり、世界観がぶれたりしたら、それなりのドラマにしかならない。とことん妥協せずに作り込みます。

 朝ドラは『てるてる家族』(2003年)から携わらせてもらっていて、今回で13回目です。台本のない状態からしっかり資料を探して読み込んで、その時代について勉強します。今回ももちろんそうしました。その上で、そのドラマのテーマに合わせた色をセットに使っています。

『あさが来た』では、柱や壁に赤茶っぽい色を使うようにしています。これは、女性の柔らかいイメージを表現するためです。

 ただ、主役はあくまで演者さん。芝居の邪魔をせず、自然に溶け込むセット作りを目指しています。また、スタジオの広さに限りがありますから、撮影の度にプラモデルのようにセットを組み立てます。

 毎回、ゼロから作っていては、スケジュール的に厳しくなるので、1つのセットを使い回して、複数の建物に見せています。

 加野銀行、あさの実家・今井家、はつが嫁いだ眉山家、加野屋――この4つは、1つのセットなんです。障子や襖などを変えています。例えば、加野屋を加野銀行にするとき、障子をガラスに変えました。あと、大阪商人が集う大阪商工会議所の応接室は、『マッサン』では鴨居商店の社長室でしたし、加野炭坑で炭坑夫が寝泊まりする部屋は、ウイスキーの樽小屋でした。

 ちなみに、昔のガラスは今より透明感がないので、フィルムを貼って、わざと透明感をなくしています。

 予算にも限りがあるし、解体しても組み立てやすくするため、加野銀行の門は、すべて鉄製では作っていません。枠の部分だけは鉄製ですが、あとは木材と塩化ビニル製の水道管を使っています。塩ビを使ったのは、セットに使える材料がないかホームセンターに常日頃通っていて、それがヒントになりました。

※女性セブン2016年3月17日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン
ラオス語を学習される愛子さま(2025年11月10日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまご愛用の「レトロ可愛い」文房具が爆売れ》お誕生日で“やわらかピンク”ペンをお持ちに…「売り切れで買えない!」にメーカーが回答「出荷数は通常月の約10倍」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《10代少女らが被害に遭った“悪魔の館”写真公開》トランプ政権を悩ませる「エプスタイン事件」という亡霊と“黒い手帳”
NEWSポストセブン
「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
『見えない死神』を上梓した東えりかさん(撮影:野崎慧嗣)
〈あなたの夫は、余命数週間〉原発不明がんで夫を亡くした書評家・東えりかさんが直面した「原因がわからない病」との闘い
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン