「ナレーションは、役を演じるのと違う角度でドラマの中に入っていけるから楽しいですね。演出家に『今度はこんな感じで』と言われたのを自分の中でアレンジしています。できるだけ、物語の枠の外に自分の声が存在するように心がけています。だから、ナレーションだけ読んでも筋がなんとなく分かってくるというか、『この文章は物語の大体この辺だな』というのを考えながら読むという楽しみもある。
最近は朗読に凝っています。朗読は、いろんな役を全部自分でやれるというのが面白い。
声の出し方は、役を演じる時も普段でも、サービス精神で考えています。相手の目とか表情を見ながら、自分の出す声のバランスをとるというのがミソで。
僕の場合、生きていること自体がサービス精神ですよ。楽しんでほしい。まあ、単に笑いがほしい、ウケたいというだけなんですが。相手の弱点を突くのも得意で、貶めてでもウケたいからカミさんには『あなたは酷い。それはサービス精神なんかじゃない』と言われますけどね。
杉村春子さんは笑われるのが好きじゃなかった。高校生を客にして芝居した時に客席があまりに笑うものだから舞台を止めたこともあって。逆に芥川比呂志さんは笑われるのが好きで、脇役でも、いちびり(*関西弁で「出しゃばり」「お調子者」の意味)。目立っていた。そこも師匠譲りかもね」
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2016年3月25日・4月1日号