以前から役者としての前田敦子に私は注目してきた。例えば去年の『ど根性ガエル』(2015年夏ドラマ日本テレビ系)でも、「『一人だけ演技下手』などとネットでは酷評されているが、私はまったくそう思わない」と評した。もちろん、前田敦子を芸達者とは言わないが。
「京子は、ひろしの『しょうもない熱さ』に対置する駒だ。だから、感情を入れずクールに、棒きれのようにぶっきらぼうにしていなければ。前田敦子は、そうした自分の役の意味を、よく理解している。素っ気なく不機嫌を貫く演技はなかなかのもの。後半に突如爆発する感情的セリフが、その分、ド迫力を持った」(NEWSポストセブン2015.7.18)
彼女の特徴は、物語に描かれた人物像を的確に把む直感力と理解力。そして、自分自身を突き放して観察するクールな視線。私なんて何者でもない、という「透明感」と、作り上げた私を次々に捨てていく強い「覚悟」を感じる。
「覚悟」といえば、昨今こんな「大女優」もいたりする。NHK朝ドラの中で、シワ一つ無いツルツルお肌に銀髪のカツラを載せただけで、すっかり「おばあさん」になった気分。「おばあさん」役を演ずるという「覚悟」がこのベテラン女優からは感じられない。「年齢より若く見られたい」という願望ばかりが画面から滲み出てくるようだ。
このベテラン女優と前田敦子を対置して見てみると……役者にとって「覚悟」というものがいかに大事なのか、基本となるのか、つくづく感じてしまう。あっちゃんには大いなる「覚悟」をもって、毒島の毒を振りまいて欲しい。