国際情報

中国人亡命者 タイに辿り着いても強制送還に怯える生活

中国からの亡命者・顔伯鈞氏(写真右)

 中国当局による弾圧は目を覆いたくなる。最近では東南アジアなど、国外にも張り巡らせた“密告網”により民主化を望む中国人が次々と捕らえられている。国際社会の目が届かぬ地で、中国当局は不穏の芽を摘み取っているのだ。

 ノンフィクションライター・安田峰俊氏は、当局の弾圧を受けタイに逃れた民主活動家を取材。習政権に背く者に対する凄まじい拷問が明らかになった。

 * * *
 地理的に近い東南アジア各国に流入する中国人亡命者はいまなお多い。私が昨年2月にバンコクで出会った亡命者・顔伯鈞(イエンボォジュン)氏が経験した亡命の壮絶な経緯と、現状を紹介しておこう。

 顔氏はかつて北京工商大学の副教授で、新公民運動 (※注1)に積極的に携わった人権活動家だ。

【※注1/2012年5月に許志永が正式に提唱した、穏健な民主化運動。最盛期には中国全国で10万人規模のシンパが存在したとされるが、習近平政権成立後にほぼ壊滅した】

 運動が弾圧された2013年4月に北京を脱出。中国国内を放浪した末、ついに2014年12月に国外亡命を決めた。当局のマークを受けて飛行機を利用できず、陸路での密出国だったという。

「まず、雲南省南部の国境の街・打洛(だらく)から、ミャンマー北東部のモンラーに渡りました。現地は軍閥の支配地で、ミャンマー政府の支配が及ばない場所。パスポートなしでも国境を越えられるのです」

 モンラー軍閥の支配者は、林明賢(リンミンシエン)という華僑だ。往年は文化大革命で暴れた紅衛兵崩れで、その後に中国・ミャンマー国境のジャングル地帯に独立勢力を築いた。顔氏は現地に友人がおり、ここからの逃亡を選んだ。

 だが、華僑系の軍閥だけに中国の影響は強い。捜査の手も国境を越えて伸びていた。

「宿の主人が中国公安への情報提供者だったらしく、深夜、追っ手に部屋へ踏み込まれそうになりました。慌てて友人の車で逃げました」(顔氏)

 山道で30km近くの距離にわたるカーチェイスを続け、追跡者を振り切った。追っ手に怯えながら移動し、メコン川を下りラオスに脱出する。だが、こちらも安全ではなかった。

「中国企業がラオスの土地を買い取って作った、金三角特区というカジノの街に身を寄せました。しかし、現地は警官の多くが中国人で、事実上の中国領のような場所。危険を覚えて離れました」(顔氏)

関連キーワード

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン