大地真央が演じる「200年続く材木問屋・青柳商店の女将」も、下町の商売人としては違和感あり。ずらずら部下を従えて相手を睨みつける風情なんて、材木問屋の女将というより、「極妻」にしか見えない。

 サッパリとした気風を美とする江戸っ子。しかも人の上に立つ大問屋の女将が、他の家の鯛を見て「うちより小さい」と人前でけなすなんて、そんな野暮で子供じみたことするだろうか。気に食わなきゃチクリと嫌味くらい言うかもしれないが、この女将はあまりにも稚拙な人物像。そもそも下町の人に対しても失礼な描き方。演出サイドもダメ出ししないのか不思議。もしかしたら演出陣自身が、東京弁や江戸っ子の特徴に気づかないまま下町を描いている?

 セリフといえば、向井理演じる鉄郎という、時々現れる叔父さんキャラもどうなのか。寅さん的風来坊をやってるつもりかもしれないが、とにかくセリフ回しが上滑っていてリアリティがなく、「てやんでい」と開き直るその姿はまるでコント。

 とはいえ『とと姉ちゃん』は視聴率20%越えが続く人気ぶり。一方で、ネット掲示板を中心に飛び交う辛口批評の数々。視聴率とブーイングとの落差を、どう理解したらいいのだろう?

 おそらく視聴者の一部──中年以上で昭和の時代風景をよく知っている人、『暮らしの手帖』を愛読してきた人、東京ネイティブといった人たちの中に、ドラマに対する違和感が膨らんできているのでは。

 違和感→感情移入できない→距離をもって俯瞰→作りの粗さがまた見えてしまう→違和感というループが起こっているのかも。

 少なくとも、ドラマにおける言葉を舐めてはいけないだろう。言葉は、それが直接示す「意味」だけではなく、「速度」「音の響き」や「リズム」の中にも、伝えるべき大切なものが潜んでいるのだから。

「『綺麗に聞こえる言葉遣いを目指したい』とのことでしたので、クラシックな船場商人の言葉をベースに、なめらかではんなりとした言葉遣いになるように台本作成から携わりました」という前作の方言指導・松寺さんの言葉を、最後に紹介したい。 

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