国内

熊本地震でデマ撒き散らした知的クリーチャー(怪物)の特徴

拡散された「ライオン脱走」のツイート

 先般発生した熊本大震災で「ライオンが檻から逃げた」「朝鮮人が井戸に毒を投げた」などの悪質なネット上のデマが大きな問題になった。罪悪感なく卑劣な行動に走るこうした人々にはどんな特徴があるのか。著述家の古谷経衡氏が警鐘を鳴らす。

 * * *
 この手のデマは昨年9月の茨城県の豪雨災害でも「外国人が空き巣を働いている」などの流言となってネット空間に伝播した。ふつう、天変地異で同胞が苦しんでいるとき、ネット上でデマを拡散するという行為は異常な心理である。が、これを行う側は異常であるとは思わないのでこうした卑劣を平気でやる訳だ。

 このようなデマの発信者には、大きな特徴がある。彼らは愉快犯ではない。愉快犯とは自らの行為が犯罪であるという自覚があるから、身元を秘匿する。

 しかしこうしたネットデマの発信者の多くは、自らの身元を堂々と開陳する一方、IPアドレスを偽装するという手間をかけないので、すぐに官憲の御用になる。学校や市役所のネット掲示板上の爆破予告などがその典型で、IPを欺瞞していないのですぐに逮捕される。

 要するに、自らの行為に罪悪感を持たず、さりとてその結果、自らの行為がどのような形の社会的制裁を受けるかも想像できない。このような同じ人間種族とは到底思えない、異形の精神構造を持った人々のことを私は「知的クリーチャー(怪物)」と呼ぶ。

 知的クリーチャーたちは、性別・年代・職業を問わず、私たちのすぐ隣に何食わぬ顔で潜伏している。彼らがなぜ知的なのかといえば、相応の社会生活を営んでいるからだ。

 冒頭の「朝鮮人が……」は1923年の関東大震災の基礎知識が必要だし、「ライオンが…」は一応の画像探査能力を要求される事案だった。ネットを使いこなしているわけだから、知能そのものに問題があるわけではない。知的クリーチャーがわりと多く生息するのは、たとえば動画生放送の分野である。

 堂々と自らの犯罪を、顔を出して全国に生放送する人々(生主)が後を絶たない。大幅な速度超過の運転模様をアップロードしたり、浅草の三社祭にドローンを飛ばすと宣言したり……。官憲が黙っているとでも思ったのだろうか。

 案の定彼らは逮捕され社会的生命を失う。彼らが計画性のある愉快犯なら、巧妙に自らの身元を欺瞞するはずだが、それが無い。罪悪感がなく、すぐ先の未来を想像することもできない垂直的な思考。これが「知的クリーチャー」の持つ世界観である。

関連キーワード

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン