国際情報

台湾の新駐日代表「私の派遣は台日関係への重視の証明です」

台湾の新駐日代表・謝長廷氏(写真:熊谷俊之)

 近頃とみに日本と台湾の関係が深まっている。その台湾に誕生した蔡英文・新政権が、サプライズの人事を発表した。日本でいう首相にあたる行政院長の経験者で、2008年には民進党を代表して総統候補にもなった謝長廷氏(70)を、駐日代表に任命した。台湾の駐日代表としては過去最高ランクの人事で、その謝氏に日本赴任直前の台北で独占インタビューした(聞き手/野嶋剛氏)。

 ***
 2008年の総統選で新聞社の台北特派員だった私は、謝氏に密着し、しばしば台湾新幹線で待ち伏せして一緒に移動し、選挙の内情を教えてもらったものだ。あれから8年、コンタクトは続けてきたが、当時と比べて表情はだいぶ優しく、柔らかになった気がする。なかなか本音をつかませない日本のベテラン政治家にも通じる漫談のような話しぶりは相変わらずだった。

 謝氏は日本語が達者だが、生まれたのは戦後の1947年。すでに日本は台湾を去っており、父親は漢方医で家庭では日本語を使わず、むしろ中華文化の影響が強い家庭で成長した。祖父の兄は謝尊五という漢詩の詩人だったという。

 ただ、家庭などでは日本の歌や日本の小説に触れることも多かった。当時の国民党政権は、日本文化を規制していたが、家では日本の芸能雑誌の『明星』や『平凡』を読み、吉永小百合や石原裕次郎、小林旭などに憧れていたという。

 本格的に日本語や日本文化に触れたのは大学に入ってから。第二外国語で日本語を選び、文部省の奨学金を得て京都大学で4年間法哲学を学んだ。ちょうど日本の学生運動の盛り上がりのころで、日本で経験・目撃した「法律」と「運動」は後に台湾で謝氏が民主運動に関わる出発点になったという。

「日本留学では日本の規律、勤勉、効率、遠慮などいろいろな概念を学びました。特に影響を受けたのはやはり法律。法律は政治のコントロールを受けない。統治者の道具ではない。法律は人民のために存在する。弱い者は法律があるから強い者にも勝てる可能性がある。そういう思想に影響され、台湾に戻ったあと、国民党の専制政治と闘う動機にもなりました」

 留学時は、京都の名刹・南禅寺のそばのアパートに住み、日々、インスタントラーメンをすすったという。京都大学の加藤新平名誉教授や田中成明名誉教授らに師事し、東京大学の渡辺洋三名誉教授の影響も受け、帰国後、『法治的騙局』という本も台湾で出版している。加藤氏はいつも遅くまで研究室にこもって働いていたため、謝氏も先に帰りづらくて苦労したという。日本で尊敬する人は、恩師である加藤氏だと謝氏は語った。

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン