国内

官邸深奥発「憲法改正」肉声ドキュメント(4/4)

安倍晋三首相にとって憲法改正は究極の目標

 参院選を有利に進める中、安倍晋三・首相は悲願の憲法改正について語ることが少なくなった。いったい、何があったというのか。官邸の内幕を描いた『総理』がベストセラーになったジャーナリスト、山口敬之氏が、官邸内での憲法改正への蠢動を掴んだ。(全4回のうち最終回)

 * * *
 政治家・安倍晋三にとって憲法改正は単なる目標ではなく、DNAに刷り込まれた悲願である。
 
 1953年、麻生の祖父で時の宰相・吉田茂の要請を受け自民党の前身である自由党の初代憲法調査会長に就任したのが安倍の祖父、岸信介だ。この時のことを岸は後年、次のように振り返っている。

「(私は)新憲法はいかんと考え、改憲論者になっているけれど、その私に憲法調査会長をやれというのはどういう意味かと問うた。すると吉田さんは、お前の思うようにやったらいい。俺も今の憲法は気に食わないけれど、あれを飲むよりほかなかったのだから、君はそれを研究して改正しなきゃいかんと言う。それで私は会長を引き受けた」(『岸信介の回想』岸信介・矢次一夫・伊藤隆共著、文藝春秋)

 今の日本国憲法を制定した麻生の祖父が、改正を前提に安倍の祖父に憲法調査会長に据えたのである。

 そして岸は、1957年総理大臣に就任すると、今度は内閣に憲法調査会を設置した。その後岸は一貫して憲法改正の必要性を胸に秘めて政治活動を続けた。安保改定と引き換えに総理を辞した後も、憲法改正のためなら政界復帰してもいいとまで考えていたという。

 岸が自由党の憲法調査会長となった40年後、安倍は初当選した。翌年の1994年に自民党は党綱領や理念を見直す「党基本問題調査会」を設置した。2か月の議論を経て「自由民主党新宣言」の草案がまとめられたが、それまで自民党の党是とされてきた「自主憲法制定」が削除されていた。

 猛烈に反発したのが安倍を中心とする若手保守系議員だった。安倍らの運動の結果新宣言には「二十一世紀に向けた新しい時代にふさわしい憲法のあり方について、国民と共に議論を進めてまいります」という文言が追加された。

 爾来、安倍は憲法改正の必要性を、あらゆる立場で常に声高に訴えてきた。逆に言えば、安倍がここまで徹底的に憲法改正論議を封印したのは、今回の参院選が初めてと言ってもいいのである。

関連記事

トピックス

俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
AIの技術で遭遇リスクを可視化する「クマ遭遇AI予測マップ」
AIを活用し遭遇リスクを可視化した「クマ遭遇AI予測マップ」から見えてくるもの 遭遇確率が高いのは「山と川に挟まれた住宅周辺」、“過疎化”も重要なキーワードに
週刊ポスト
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト