芸能

佐藤浩市 役者は一息でバーベルを上げるような無酸素運動

映画『64』にも主演する佐藤浩市

 重厚な役からコメディまで、今では幅広い芝居で知られる佐藤浩市だが、デビュー作であるNHKドラマからずっと野心や衝動を抱えた若者の役を演じることが多かった。映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』から、演じる転機となった映画『トカレフ』に主演した体験を語った佐藤の言葉をお届けする。

 * * *
 佐藤浩市は1994年、阪本順治監督の映画『トカレフ』に主演、これまでのギラギラした役柄から一転し、市井の人間に潜む狂気を静かなタッチで演じた。

「それまでは分かりやすいあんちゃんの役であったり、自分の発露を暴力的な分かりやすさに求めたり、そういう役ばかりでした。でも、もう全然違う、根っこにある捻じ曲がった暗さというか、歪みみたいなものを出せる役は僕にはないんだろうかと思っている時に阪本さんからお話をいただきまして。

 ただ、これは一回流れたんですよ。最初の台本だと、新聞社に勤める印刷工で、隣の主婦の子供を誘拐する役で、毎日睡眠誘導剤や精神安定剤をバリバリ?むような少し病んでる人間でした。それで、もう一回やるとなった時に読み返してみると、違うんじゃないかなと。
 
 ごくごく普通にそこにいる人で、表層的な生き方からはそういう病みが見えない人。その方がこの役って面白いと思って阪本さんと話をして、普通に働く人になったんですよ。
 
 ですから芝居はどんどん引いていきました。でも、引きながら足しているんです。たとえば國村隼さんの演じる刑事に事情聴取を受けている時にヘルメットを動かしたりとか、実は凄くやっています。
 
 そういう足し方が今までの鼻につく芝居と違って、その人間の人格と重なる形で自然に受け入れられたのであれば、我々のやったことは間違ってはいなかったのだと思います」
 
 1990年代後半から2000年代にかけては恋愛ドラマ、近年は三谷幸喜のコメディ映画にも出演し、役の幅を広げている。

関連記事

トピックス

寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《木漏れ日のなかベビーカーを押す海外生活》眞子さん、苦渋の決断の背景に“寂しい思いをしている”小室圭さん母・佳代さんの親心
NEWSポストセブン
原付で日本一周に挑戦した勝村悠里さん
《横浜国立大学卒の24歳女子が原付で日本一周に挑戦》「今夜泊めてもらえませんか?」PR交渉で移動…新卒入社→わずか1年で退職して“SNS配信旅”を決意
NEWSポストセブン
米インフルエンサー兼ラッパーのリル・テイ(Xより)
金髪ベビーフェイスの米インフルエンサー(18)が“一糸まとわぬ姿”公開で3時間で約1億5000万円の収益〈9時から5時まで働く女性は敗北者〉〈リルは金持ち、お前は泣き虫〉
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン
「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路とは…(写真/イメージマート)
【1500万円が戻ってこない…】「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路「経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊して…」
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン