焼かれた側はすっかり許しているようだが、一方の焼いた側の織田家は「信長恩人論」をどう受け取っているのか。信長の直系の子孫・織田信孝氏に聞いた。信孝氏は小学生の頃、歴史の授業で習う信長の比叡山焼き討ちをはじめとする大虐殺の影響で、いじめられた過去を持つ。
「私は織田家の血を引く子孫であるだけで、織田家の代表という立場ではありませんが、私個人としては小林氏の考えは宗教家として素晴らしいと思います。
単に『時が経ったから水に流そう』ではなく比叡山の非も認めて、そこを起点に更なる上を目指そうとしている。日本人の気高さを感じることができた。
例えば、中国なら南京大虐殺を外交カードに使ったりしてくる。でも日本人はオバマ大統領が広島を訪問したときも過去を非難するのではなく、温かく出迎えた。それと同様の精神を感じます」
延暦寺の思いは法灯とともに後世へと引き継がれるだろう。
※週刊ポスト2016年9月30日号