その意味では、米大統領候補のトランプが語っている「米国が攻撃されても日本は何もしない。日本が攻撃されれば米国は全力で駆けつけねばならず、片務的だ」という指摘は間違っていない。いや、「だから日本はカネを出せ」というトランプの主張は受け入れられませんが、片務だというのは歴然とした事実です。

 その辺を踏まえた上で、安保法制は議論されるべきだったでしょう。

 今、北朝鮮のミサイル攻撃の危険性が叫ばれている。防衛大臣はしっかり対応せねばならない。もしそういう局面があれば、ミサイルの発射命令を出さなければならない。憲法では想定していないが、防衛大臣の責任ですから。

 私は後輩のある防衛大臣にこう言ったことがある。

 ハイジャックされた民間機が東京湾上にいる。どうやら皇居に向かっているようだ。9.11と同じことを狙っているのだろう。その場合、私が大臣だったら、奪還できないことがわかれば乗客には本当に申し訳ないが、東京湾上で飛行機を落とす。そして、その判断に対して総理なり世論が間違っていると言うのであれば、責任を取って大臣を辞める──とね。

 防衛大臣には、そういう覚悟が必要であり、常にそういう中で職務を行なわねばならないということです。

●きゅうま・ふみお/1940年生まれ。1980年初当選。防衛庁長官を2度務め、初代防衛大臣に就任。

※週刊ポスト2016年10月14・21日号

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