古くから研究対象となっている「コーヒー」。米ピッツバーグ大学のB・コーエン名誉教授は1979年に、「コーヒー1杯で平均寿命は20秒縮む」という研究を発表している。含有カフェインが膀胱がんの発症率を高めるという理屈だが、これもやはりリスク要因だけに着目した数字だ。コーヒーには血栓をつくりにくくする効果があり、心筋梗塞や脳卒中のリスクを低下させるといった研究もある。
半谷氏の著書では日本人の主食「コメ」にも触れ、「お茶碗1杯の白米で39秒縮む」とある(前出・岡教授の試算に基づく)。その根拠になっているのは米糠に含まれる無機ヒ素だ。
ヒ素といえば豊洲市場の地下水が話題だが、実はミネラルウォーターにも一定量のヒ素が含まれるため、「軟水1リットルで59秒縮まり、硬水はそれ以上という試算」(半谷氏)という。
「ミネラルウォーターには放射性物質のラジウムも含まれる場合があるので損失余命が増える。その点で見れば、塩素消毒によるリスクはあるがヒ素やラジウムを低減している水道水の方が理論上のリスクは低いといえます」(同前)
では、こうした情報をどう受け止めればいいのか。管理栄養士で日本抗加齢医学会指導士の森由香子氏は、こうアドバイスする。
「個人によって栄養状態は異なり、これさえ食べればよい、あるいは食べなければよいという食べ物はありません。白米から得られるブドウ糖は脳に必要なエネルギー源ですし、米を食べないで揚げ物や肉ばかり食べ続けると認知症リスクが高まるといわれています。摂らないことのデメリットも考えないといけません。腹8分目が前提ですが、食べたいものを食べるということも大切です」
要はバランス、なのだ。
※週刊ポスト2016年10月14・21日号