「もともと芭旺は小さな頃からお姉ちゃんとは極端に違いましたから。芭旺は何かにハマるとずっとそればかりやる子でした。2才の時に辞書にハマったときはずっと読み聞かせをせがまれて、私にとっては恐怖体験(笑い)。メジャーにハマったときは、お姉ちゃんの運動会に行っても水道とか花壇とかをヨチヨチ歩きのままずっと測っていました。この子は、こういう生き方をしたいから、私のところに生まれてきたんだと思って見守ってきたんです」(弥生さん)
嫌いな言葉を聞くと、迷うことなく「未来!」と芭旺くん。その理由は──。
「後先のことを考えてたら、予定にすべて縛られる。先のことを考えるより今! 今を楽しむ。わかるはずのない未来のことを考えるんじゃなく、今を生きる!」
大人になるとわかっていてもできずにいる「当たり前のこと」を直球で投げてくる芭旺くん。記者が質問を継げずにいると、「ちょっと話したいことがある!」と勢いよく声をあげた。
「なんて言うんだっけ? えっと…、えっと…、ああそうだ。えっと…ぼくのとーちゃんががんになって、今はステージIVなんですけども…」
「とーちゃん」とは、弥生さんの2人目の元夫のことで、芭旺くんの実の父親ではない。しかし、芭旺くんと血のつながっている父親も含め、今も家族として交流している(「2人とも父親です」と芭旺くん)。
そのとーちゃんは、7年前に大腸がんに。以来、「いつか再発するかも」という覚悟をしながら、家族は生きてきた。そして今年2月、がんは肺に転移していることが発覚。すでにステージIVだった。
弥生さんは「芭旺は病気を、私たち大人がとらえているのとは違う概念で見ていると思う」と話す。その母の言葉に、芭旺くんはこう続けた。
「手術はできないって言われているから、治療は副作用で吐き気とかある抗がん剤を使っている。それはただ命が延びるだけで、それよりも苦しむ時間のほうが長いから使わなければいいのにって、ぼくは思ってる。長く苦しむなら、短く楽しんだほうがいいんじゃないかって思ってる。でもそれは、とーちゃんが命をかけて選んだ治療法。それで好きなことをめいっぱいやって生きてる。肉も食べてるし、温泉にも行ったし、毎週趣味のミュージカルを見に行ってる。それをぼくに見せてくれている。いつどんなときも楽しめるぞ!って、命をかけて教えてくれる先生!!」
芭旺くんはそんなふうに、家族のがんと向き合っている。
※女性セブン2016年11月3日号