反対に健康不安が出ていたクリントン氏は、それを払拭すべく顔色が明るく見える赤で、動かなくても積極性や活動性、強さや情熱などをアピールしていた。さすがに、戦う時の色の使い方がうまい。
2回目の討論会、クリントン氏は真っ白のインナーに濃紺のスーツで、慎重で知的、常識があり誠実といった面をアピール。この時は、歩き回れる自由討論形式。背景はやはり青。会場を歩き、動きをもたせることで、青のもつプラスのイメージを強めることができる。
トランプ氏は赤のネクタイ。本来なら、赤で力強さやエネルギーなど企業家として培ってきたリーダーシップを表現したいところだが、クリントン氏が話している最中、その後ろで、むやみに会場を行ったり来たりしたことで、攻撃的で感情的、イライラや落ち着きのなさを感じさせたみたい。
注目の3回目。トランプ氏は赤のネクタイに黒のスーツで、クリントン氏はオフホワイトのツーピース。白といっても、冷淡や虚無感、緊張感を与えない柔らかい白をもってくるところは、やはり選挙慣れしている。加えて、3回目の討論会直前、ウィキリークスに公表されたクリントン陣営のメール問題への潔白をアピールしたかったのかも。
討論会の最中のクリントン氏の立ち居振る舞いを見ると、回を重ねるごとに、ジェスチャーが増えていった。トランプ氏の暴言やスキャンダルにも関わらず、無党派層の支持率が伸び悩んでいたから、どうにかそこにアピールし、票を取らなければという焦りが見え隠れしていた気がする。
この日よく見られたのは、反論しやすいネタをトランプ氏が口にすると、待ってましたとばかりに、顎を上げ、目を開いて、口元をゆっくりと開き微笑む様子。鼻もちならない勝ち気さと狡猾さが垣間見えるようで、クリントン氏を信用できないという有権者が最も嫌うような仕草だろう。
クリントン氏には、顎を上げ相手を見下ろすような表情も多い。これは自分に威厳をもたせ、相手より優位に立っていると感じているから。1回目では、椅子の背にもたれ、トランプ氏の方にお腹を出すように座って手を組んでいた。相手にお腹を見せるというのも、強気で、自分が優位な立場にいると思っている仕草。
会場からの質疑応答で自由に動き回れた2回目、トランプ氏が話している間、クリントン氏はじっと椅子に座ったまま。質問者の方に近づく時もゆっくりと歩を進め、落ち着きや余裕を見せていた。大統領候補たる者こうあるべき、という見本のような行動だろう。
対するトランプ氏は、ムスリムについて質問された時は、さすがにまずいと思ったのか、思わぬ不安を見せた。米軍に従軍し、イラク戦争で亡くなったイスラム教徒の若者の死について、暴言を吐いていたからだ。クリントン氏に批判され、自分の椅子の後ろに立ち、椅子の背を両手でグッと掴んで体重をかけ、寄りかかっていた。マイナス感情が高まり、何かにしがみついて気持ちを落ち着かせたいという潜在意識の高まりからだと思う。