1988年にはロンドン大学などがイギリス、アメリカ、日本など32か国、約1万人を対象に大規模疫学調査「インターソルトスタディ」を行なった。この調査では、1日の塩分摂取量が6~14グラムの人たちには、塩分摂取と高血圧に相関関係が見られないという結果が出た。
日本人が平均的に摂取する塩分摂取量は10~12グラムなので、普通に食事している分には塩分は高血圧の原因とはならないというわけである。管理栄養士の内野未来氏の話。
「しょうゆは大さじ1杯(15ミリリットル)で約3グラムの塩分を含みます。ほうれん草のおひたしなどにかけるしょうゆは、使っても2~3ミリリットル、塩分でいえば0.4~0.6グラム程度です。そういった細かいところまで気にする必要はないでしょう」
その後、塩分と高血圧の関係について数々の論文が発表されたが、「塩分を控えれば血圧は下がる」という結果は出なかった。
1987年の米国のジョン・ミラー教授らの研究報告では、正常血圧の男女82人を対象に1日塩分摂取量を9.2グラムから4グラムまで12週間減塩した結果、血圧値に変化のない人が53%、下がる人は30%、そして17%は逆に血圧が上昇した。
米国・ハーバード医学校のチャールズ・ヘネケンズ医師らが1997年に発表した研究「TOHP II」では、高血圧気味の人を対象に長期間にわたって減塩食を与えたが、6か月かけても収縮期血圧で2.9mmHg、拡張期でも1.6mmHgしか下がらず、3年目には減塩食を始める前に戻ってしまった。
「長期間の減塩もほとんど効果がないとすれば、塩分以外の要因で高血圧が引き起こされていると考えざるをえない」(前出・白澤氏)