そうした交渉のなかで球団側は“選手の評価”を示すことになる。選手一人ひとりについて、全試合を網羅した査定資料を用意するのだ。前出・野崎氏が続ける。

「各球団には査定担当がいて、全試合を観戦し、厳しく採点しています。凡打一つとっても進塁打かどうか、空振りも盗塁を助けるものかどうかなど、実に事細かにチェックする。同じヒット1本でも、先取点につながる1本やサヨナラ勝ちの決定打かで評価が変わる。マイナスポイントになるのはサインの見落としや併殺ぐらいで、基本的には加点方式です」

 選手を“説得”する材料だけに詳細なデータとなる。ある在京球団関係者は「査定項目は260以上にも及ぶ」と証言した。そうして積み上げられたポイントが年俸増減の基準になる。

「もちろん、入団2年目の選手の1000ポイントとベテランの同じ1000ポイントでは、やはり10年選手の方が評価は高くなる。年功序列の要素もあって、基本的には前年比でポイントが増えたか減ったかを見ていきます」(野崎氏)

 査定項目については、選手側からの要望を吸い上げて変わってきた経緯もある。

「中継ぎ投手が“得をするのは先発ばかり”と訴えた時期がありました。常に臨戦態勢をとる中継ぎは、肩を作っても出番のないことが多い。その主張を認めて、ブルペンでの練習投球数も査定対象にした」(前出の在京球団関係者)

 1年間のプレーが詳細にデータ化された上で、いよいよ交渉が行なわれる。

※週刊ポスト2016年12月9日号

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