銀行口座開設や車の購入など各種契約に暴力団排除条項が盛り込まれることが一般化し、契約を結ぶのが困難になった反社に名義を貸すことは、当局による厳しい取り締まりの対象となる。暴力団に詳しいライターの鈴木智彦氏はこういう。
「一般人同士でも名義貸しは違法ですが、実態としては警察が暴力団排除のために特化して検挙をしている犯罪です。暴排条例の施行以降、取り締まりはどんどん厳しくなっている」
2016年1月には、自分が使う車を妻の名義で購入した愛媛県今治市の山口組系矢嶋組の組長が逮捕され、共犯者の妻にも逮捕状が請求されている。それだけに、A記者が何をしたかに、関係者の注目が集まっているのだ。
「報道各社はこの件を注視していて、各社で警視庁の捜査2課と4課担当記者が上司に呼び出されて“ネタを取るために名義貸しなんてしてないだろうな”と注意を受けていた」(大手紙社会部記者)
事件取材では、時に反社会的勢力やその周辺が取材・調査の対象となることがある。A記者はどうだったのか。仕事を共にした経験がある記者が振り返る。
「暴力団絡みや薬物犯罪など際どいテーマでも熱心に取材してきた。2014年5月に逮捕されたASKA(2016年11月に再び逮捕・後に不起訴)の覚醒剤所持事件の取材や甘利明・前経済再生相の口利き疑惑などもそうで、グレーゾーンに属する人脈に果敢に食い込んでいくのです。
ただ熱心なあまりのめり込んでいくタイプで、間合いの取り方を間違えてしまったのかもしれません」
フジテレビの対応はどうなのか。12月中旬、本誌が直撃した時点ではA記者は会社に出勤するようになっていた。
「疑惑に関して警察からの接触はあったものの、上司の目が行き届く内勤に置くというかたちになっているようです。名義を貸した相手が組員なのか、その周辺の人間なのか、情報が錯綜し、幹部は取り扱いに右往左往しています」(フジテレビ関係者)
※週刊ポスト2017年1月1・6日号