放送大学教授の原武史さんは、陛下が摂政を拒まれる真意についてこう分析する。

「天皇が言うような2派による意見の対立というのは天皇家の内部の話で、説得力が弱いのではないか。私は、天皇は譲位することで平成という元号を変えたいという意向を持っているのではないかとみています。

 生前退位がしばしばあった江戸時代までは天皇の在位中でも天変地異が続くと、不吉だという理由で改元がたびたび、行われてきました。しかし、明治以降は天皇が亡くならないと改元できなくなってしまった。大正の時は皇太子を摂政にしたため元号が変わらず、不吉なことが起こるといわれる亥(いのしし)年(1923年)に関東大震災が起こった。平成では、やはり亥年に起こった阪神・淡路大震災や、東日本大震災など災害が続いているので、亥年の2019年までに譲位して改元しようとしているのではないでしょうか。祈りを重視する天皇ならば、こうした一見非合理な考え方を持っていてもおかしくはありません」

 最後に電話口の陛下は明石さんにこう念を押したという。

「この問題はぼくの時の問題なだけではなくて、将来を含めて譲位が可能な制度にしてほしい──」

 皇位継承について皇室典範は、「天皇が崩じたときは、皇嗣(皇位継承者)が直ちに即位する」と定めており、天皇は終身在位が前提となる。

 だが明石さんとの会話で明かされたのは、恒久的な譲位制度が陛下の「真意」であるということだ。それを実現するには皇室典範を改正する必要がある。陛下の意を受けた明石さんは昨年8月、密かに官邸を訪問した。明石さんは言う。

「陛下の思いを伝えようと伺いました。杉田和博官房副長官が応対してくれましたが、彼は『制度化は難しい』と繰り返すばかりでした。陛下の思いを真摯に受け止めようとしているとは思えなかった」

 思い悩んだ結果、明石さんは昨年11月末、陛下の思いを世の中に伝えるため、陛下からかかってきた電話の内容をメディアに明かした。

撮影/雑誌協会代表取材

※女性セブン2017年1月19日号

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