一方、もう一つの昭和の代表的な娯楽である相撲界からも、続々とレコードが発売されていた。野球選手と同じく演歌系が目立つ中、異彩を放ったのが高見山の『ジェシー・ザ・スーパーマン』だ。中古レコード店『えとせとらレコード』の小野善太郎氏が語る。
「基本的に野球選手や力士のレコードは音楽的にはあまり評価されません。しかし、この歌はディスコサウンドで、曲目当てで買われる珍しい1枚。中古レコード市場には、ディスコというジャンルに一定のファンがいるからです」
1970年代には、増位山太志郎が『そんな夕子にほれました』『そんな女のひとりごと』という2曲ものミリオンヒットを飛ばした。力士からの更なるヒット曲が期待されたが、1985年、相撲界ではレコード発売が全面的に禁止になってしまう。
「力士の本分は相撲だからです。現在は協会が内容を認めたものに限り、発売が許可されています。昨年、白鵬が東日本大震災復興応援ソングとしてCDを出しています。ただし、付随したイベント出演などは制限されます」(日本相撲協会広報部)
本業以外における選手や力士の意外な一面を見て、ファンになる層もいる。昭和時代、歌が2つの競技の人気を陰ながら支えていたのかもしれない。
■取材・文/岡野誠
※週刊ポスト2017年2月10日号