しかし、上層部は、「アメリカ代表が勝つに越したことはないが、WBCはあくまでベースボールの国際化が第一」という主張を貫くばかりだった。過去を振り返れば、第2回大会のベスト4が最高位で、第1回・3回大会は第2ラウンドで敗退。全米を熱狂させるどころか、WBCの認知向上に貢献しているとは言えず、子会社の中で比較しても、微妙な立ち位置だ。

 メジャーリーガーは当然のように大型契約を結んだ所属球団に忠誠を誓う。ケガのリスクを背負ってまで、そして野球人生をかけるような大会ではなく、一つの興業の域を出ないWBCに出場するようなメジャーリーガーは、決して多くはない。これではオリンピックのバスケットボールで成功した「ドリームチーム」の結成など夢のまた夢だ。

 それでも開催を続行するのはなぜか。拙著「メジャーリーグのWBC世界戦略」(PHP新書)でも示しているように、WBCが人材獲得の重要な「ショーケース(見本市)」に成長したからである。

 日本を筆頭に韓国や台湾というアジア、未開の地であるヨーロッパやアフリカ、そして野球大国キューバ。彼の地の有望株がメジャーのボールパークで、メジャー球で、打って、投げてプレーする。スカウトはマウンドにスピードガンを向け、次のスターの品定めに奔走するようになった。その証拠に、松坂大輔、ダルビッシュ有、田中将大、前田健太はWBCでブレイクし、ポスティング制度で大金を手にして海を渡っている。

 MLB機構がこの黄金の「WBCルート」で大きな期待を寄せていたのが、大谷翔平だった。しかし、1か月後に迫った中で、「大谷WBC辞退」で事態は急転。MLB機構の目論見は見事に外れた。

 WBCの開催は4年に1回であり、次回開催は2021年。メジャー志向の強い大谷はその頃、メジャーのどこかのユニホームを着ているだろう。大谷のような次代のスターが唯一の光明だった「WBCルート」を通らずに、メジャーデビューしていれば、WBC自体の存在意義に疑問が投げかけられ、存続議論にさらに拍車がかかってもおかしくないだろう。

 幻に終わった大谷翔平、WBCデビュー。一番ショックなのはもちろん大谷本人だが、MLB機構の重鎮たちも、がっくりと肩を落としているはずだ。

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