ではなぜ、安倍首相は淡々と否定するだけでなく、こんな手法を取るのか。それは相手に罪悪感を感じさせるためだろう。「こんなにひどい事を言われた!」「あらぬ疑いをかけられた!」と責められると、人は逆に、なんとなく悪い事をした気分になり、罪悪感を感じてしまう。

 訴えられ、怒りをぶつけられることで罪悪感を感じてしまうと、人はそこで不快感を抱き、嫌な気持ちになることから離れようとする。つまり、自分が先に印象の悪い言葉を使って被害者意識をアピールすることで、相手の追及の手を緩めさせようとしているのだと思う。

 だがこの手法、うまくいっているとは思えない。印象操作を訴えた後の答弁がしどろもどろなのだ。何度も同じことを繰り返したり、言葉につかえたり詰まったり…。答弁が論理的で明快、一貫性があり誰が聞いても納得がいくものだからこそ、攻める野党の悪者感が際立ち、首相の潔白が浮き出るものだが、今回はどうも歯切れが悪すぎる。

 さて、そんな安倍首相には気になる仕草がある。それは衆議院予算委員会でのこと。今井議員の質疑応答で名誉職の話になり、答弁に立った首相は、「名誉的な立場において」とジャケットの両裾をまくったのだ。

 ここで尻をまくるのか? それともわき腹でも見せるのか?と思いきや、ズボンの中にシャツを入れ直し、ジャケットの前を直しただけ。わき腹やお腹を見せるという仕草は、いかなる批判にも動じず、引き下がらないという意思の表れとも言われる。それだけに裾をまくった瞬間、「おおっ!?」と思ったが、ちょっと肩すかしをくらった気分だ。

 同じことは福島議員の答弁でも起きた。「寄付集めで名前を使われたことに名誉棄損で訴訟しないのか?」と問われ、「総理大臣でない時には…」とジャケットの両裾をまくり上げ、ズボンをベルトごと持ち上げると、ジャケットの前を整えたのだ。

 何が言いたいのかというと、安倍首相は立場についての発言の時に、無意識のうちに着ている服を直したということ。単なる偶然かもしれない。だが、総理大臣という立場に立った時は身を正さなければという気持ちの表れ、と取れる気もする。

 とすると、「妻は私人」「別人格」と主張し、小池議員に広告塔となった感の強い昭恵夫人の行動への道義的責任を問われても、「答えられない」と言い切ったが安倍首相だが、内心どこかで「脇が甘かった身辺をきちっとしなければ…」と思っているのかもしれない。

 果たしてこの問題、どう決着がつくのか? こちらも身を正して行方を見守りたい。

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