西本氏の話は止まらない。
「せっかくなら毎年12月開催の湘南国際マラソンを1か月後の箱根と同日開催にしたら東京マラソンと同様、並走する市民ランナーからの声援で一段と盛り上がるに違いありません」
さらに瀬古氏が高校で800m、1500mの2冠達成ランナーだったことを踏まえて西本氏が続ける。
「箱根に中距離の区間を加えてもいい。『スピードスター区間(1500m)』と『マラソン区間』ができれば、これまで箱根人気とは無縁だった種目の選手も注目され、陸上界全体の世界挑戦に弾みがつく」
実現性はさておき、瀬古氏の箱根駅伝改革の提案は議論の広がりを見せる。高速化した東京マラソンの新コースの設計にあたったレースディレクターの早野忠昭氏はいう。
「当日、浅草付近の直線でペースメーカー(世界記録ペース)と並走するバイクから後ろを見たら、遠くに日本記録に近いペースで走る日本人選手が見えたんです。彼らは“世界との距離”を感じたはず。設楽悠太(東洋大卒、Honda、2時間9分27秒)選手はレース後『今後どう走ればいいかわかった』とコメントしたが、きっと今なら瀬古さんのいうことが理解できるんじゃないでしょうか。『練習量はほんとうに必要なんだ』って」
箱根が面白くなり、マラソン強化にもつながる策はあるのか。改革を試みる余地はありそうだ。
※週刊ポスト2017年3月17日号