国内

戦後の矛盾に気付き冷戦後の迷走も予測 甦る山本七平の言葉

日本を取り巻く「空気」の正体とは

 東京都「築地移転問題」にせよ、東芝「巨額損失」問題にせよ、組織の迷走が昨今目につく。組織を動かすのはリーダーシップではなく、こうあってほしい、こうなるだろうという「空気」。責任の所在を問おうにも問えない。

 これを日本人特有の問題として摘出したのが思想家・山本七平だ。キリスト教一家に生まれ、フィリピンで終戦を迎え、戦後、防衛庁前で小さな書店を営んだ。その男が数十年前に警鐘を鳴らした「言葉」は古びるどころか、いっそうの危機感を伴い、我々に気づきを与える。文芸評論家の富岡幸一郎氏が、山本七平について語る。

 * * *
 確かに、そろそろ山本七平に立ち返るべき時がきたのかもしれない。その理由としてまず、「アメリカ・ファースト」を主張するトランプ政権をはじめ、現在、世界的にポピュリズムが盛り上がりを見せていることが挙げられよう。

 ポピュリズムとは大衆迎合主義であり、庶民の常識を政治に反映するものである。現在では、より所得の低い人たちが特権階級の富裕層を批判するものとなっている。欧米は移民問題に直面し、イギリスがEU離脱を決めたのはその象徴だ。

 しかし、日本における先の舛添バッシングなどの同調圧力を「ポピュリズム」と言えるかは疑問である。世界的なポピュリズムの動きとは異なり、日本では独特の精神を反映した「ポピュラリズム(人気主義)」なのではないだろうか。

 それはすなわち、かつて山本七平が言った日本人特有の宗教風土、文化精神に根ざす“空気”が濃密に現れた結果であり、それを正確に表す言葉がないために、とりあえず「ポピュリズム」としていると言ってもよい。我々は、その空気の正体を見極めなければならない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・イメージ 写真はいずれも当該の店舗、販売されている味噌汁ではありません)
《「すき家」ネズミ混入味噌汁その後》「また同じようなトラブルが起きるのでは…」と現役クルーが懸念する理由 広報担当者は「売上は前年を上回る水準で推移」と回答
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン