──著者がいた時代の野村證券は「ノルマ証券」などと言われるほどノルマが厳しく、「稼げば何でも許される」の企業風土があったそうですが、バブル期の住友銀行は?

國重:収益を上げることに貪欲極まりないことからついたあだ名が「ケチ友銀行」です。磯田さんは稼ぐためには「向こう傷を問わない」と言っていましたし、僕もそれを素晴らしい言葉だと思っていました。そもそもコンプライアンスという言葉すらありませんでしたから。そういう時代に何もしなかったら、ライバルに後れを取ってしまいます。

 著者は、当時の野村證券は、「最後のゴミ捨て場」と言われるような、客が絶対に儲からないとわかっている商品を売ったり、今なら証券取引等監視委員会から呼び出しを食らうような売買をしたりした、と書いています。

 普通、銀行が融資するときの不動産の担保評価は6割、7割ですが、あの頃は“明日になれば土地価格は20%上がるんだから、100%が当たり前じゃないか”という感覚で、僕も本社の審査部を納得させていました。それと、「カラオケで歌うのはもちろん演歌」と書いてありますが、それも同じです(笑)。昭和ですから。

──それにしても、なぜ著者がやっていたような強引な売り方が客に通用したのでしょうか。

國重:当人ではないので想像ですが、金融商品を売りながら、根本的には「横尾宣政」(本書の著者)という人間を売っていたのだと思います。何度も断られ、門前払いを繰り返されながらも、めげずに通い続ける。そうすると、いつかお客さんが根負けしたり、つい苦笑いしたりして心を開く。そういう瞬間がやってくるんですね。で、「こいつの言う通りにやってみようか」「それで損をしても仕方ない」と思うようになるのではないでしょうか。

 僕が初めて支店長になって外回りの営業に出るにあたり、事前に部下にお客さんを回らせ、「今度の支店長は本社の企画部を歩いてきたエースで、将来の頭取候補ナンバーワンです」と言わせました。

 そうすると、お客さんは「この支店長と付き合っておくと、将来いいことがあるかもしれない」と期待して預金してくれるんですよ。そんなこんなで、預金額を前任の支店長時代の50億円から500億円へとひと桁伸ばしました。いわば僕という人間の将来性を売っていたわけです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン