ライフ

【書評】通説の虚をついた大胆な推論による徳川家歴史実録

【書評】『徳川制度 補遺』/加藤貴・校注/岩波文庫/1740円+税

【評者】池内紀(ドイツ文学者・エッセイスト)

 明治前半期の代表的な新聞だった「朝野新聞」連載の歴史読み物より、先に『徳川制度』三冊が編まれた。そこからこぼれ落ちたのを「補遺」としてまとめ、校注、全四巻の索引をほどこしたもの。全八○○余ページ。文字どおり圧巻の文庫になった。

「鎖国始末」「大久保忠隣の改易」「釣天井始末」「柳沢吉保」「社界魔」……。タイトルを見ただけでワクワクする。学者には相手にされないが、「実録」というイキのいい語りでしるされ、威勢よく通説に異をとなえているからだ。校注者加藤貴による注記は一六五ページに及び、これだけで独立した一冊としてたのしめる。

 鎖国に至る前のイエズス会と時々の権力者とのかかわりは、前近代グローバリズムの見本というものだろう。アメリカ新大陸を「発見」したスペイン。ポルトガルの侵略、強奪ぶりからして、鎖国政策がいかに正当な選択であったかがうかがえる。

 日本人最初のイエズス会イルマン(修道士)となった琵琶法師ロレンソとキリシタン排撃を主張した日乗との間に、永禄一二年(一五六九)、信長立ち会いの宗論があった。そんな注記が実録を何倍にも深めてくれる。

「余は大納言の一件を以て、上野介一件の復讎とはいわざるなり。しかれども、上野介一件は、少なくとも大久保事件の復讎なりと推定せざるを得ず」

関連記事

トピックス

中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
【独占直撃】元フジテレビアナAさんが中居正広氏側の“反論”に胸中告白「これまで聞いていた内容と違うので困惑しています…」
NEWSポストセブン
不倫報道の渦中、2人は
《憔悴の永野芽郁と夜の日比谷でニアミス》不倫騒動の田中圭が舞台終了後に直行した意外な帰宅先は
NEWSポストセブン
富山県アパートで「メンズエステ」と称し、客に性的なサービスを提供したとして、富山大学の准教授・滝谷弘容疑者(49)らが逮捕(HPより)
《現役女子大生も在籍か》富山大・准教授が逮捕 月1000万円売り上げる“裏オプあり”の違法メンエス 18歳セラピストも…〈95%以上が地元の女性〉が売り
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(Instagramより)
〈シ◯ブ中なわけねいだろwww〉レースクイーンにグラビア…レーサム元会長と覚醒剤で逮捕された美女共犯者・奥本美穂容疑者(32)の“輝かしい経歴”と“スピリチュアルなSNS”
NEWSポストセブン
永野芽郁のCMについに“降板ドミノ”
《永野芽郁はゲッソリ》ついに始まった“CM降板ドミノ” ラジオ収録はスタッフが“厳戒態勢”も、懸念される「本人の憔悴」【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
日本人メジャーリーガーの扉を開けた村上雅則氏(時事通信フォト)
《通訳なしで渡米》大谷翔平が活躍する土台を作った“日本人初メジャーリーガー”が明かす「60年前のMLB」
NEWSポストセブン
スタッフの対応に批判が殺到する事態に(Xより)
《“シュシュ女”ネット上の誹謗中傷は名誉毀損に》K-POPフェスで韓流ファンの怒りをかった女性スタッフに同情の声…運営会社は「勤務態度に不適切な点があった」
NEWSポストセブン
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(時事通信社/読者提供)
《動機は教育虐待》「3階建ての立派な豪邸にアパート経営も…」戸田佳孝容疑者(43)の“裕福な家庭環境”【東大前駅・無差別切りつけ】
NEWSポストセブン
未成年の少女を誘拐したうえ、わいせつな行為に及んだとして、無職・高橋光夢容疑者(22)らが逮捕(知人提供/時事通信フォト)
《10代前半少女に不同意わいせつ》「薬漬けで吐血して…」「女装してパキッてた」“トー横のパンダ”高橋光夢容疑者(22)の“危ない素顔”
NEWSポストセブン
“激太り”していた水原一平被告(AFLO/backgrid)
《またしても出頭延期》水原一平被告、気になる“妻の居場所”  昨年8月には“まさかのツーショット”も…「子どもを持ち、小さな式を挙げたい」吐露していた思い
NEWSポストセブン
露出を増やしつつある沢尻エリカ(時事通信フォト)
《過激な作品において魅力的な存在》沢尻エリカ、“半裸写真”公開で見えた映像作品復帰への道筋
週刊ポスト
憔悴した様子の永野芽郁
《憔悴の近影》永野芽郁、頬がこけ、目元を腫らして…移動時には“厳戒態勢”「事務所車までダッシュ」【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン