石坂が演じるのは一世を風靡したシナリオライター、菊村栄。ドラマではテレビ業界で活躍した人のみが入居を許される特別な老人ホーム「やすらぎの郷 La Strada(ラ ストラーダ)」でくり広げられる人間喜劇がユーモラスに描かれる。
週5日の放送とあって、撮影は昨年10月からスタートしていた。
「クランクインした時にはもう、倉本さんが書かれた全130話の脚本が揃っているわけですよ。130話ですからねぇ。それはもう奇跡的なことなんです。すでに脚本があるから、あっちを撮ったり、こっちを撮ったり、放送回をバラバラに撮影できてしまうから、頭の整理が大変。
あとはね、毎日放送されるということで、ドラマの作り方が絶対的に違うんです。次へ続けるというか、うまく火が点くことを期待させるというか、毎日の盛り上がりを落としちゃいけない。芝居以外にも、すごく気を遣います」
石坂は、でもね、と言葉を切る。
「結局、60年以上この仕事をやってきて、この役をやれないとしたら、その時間を無駄に過ごしてきたことになるんですよね。
役者人生の中で培ったノウハウがあって、毎日続く昼の連続テレビドラマであればそれをすべて出せる。逆に出せなかったら、60年間生きてきたことが無駄だったかもしれないという、切羽詰まったところで勝負しています」
切羽詰まっているという告白とは裏腹に、その表情は実に溌剌としている。撮影現場では、待ち時間に昔のドラマ撮影の裏話をすることもあるという。