たとえば、VTRがない時代の生放送でのドラマ作り。役者の演技はもちろんナレーションもすべて同時に一発撮りで収録していた。現代にはない緊迫感が漂う当時の現場事情に、スタッフも「へぇ!」「すごい時代ですね」と身を乗り出し、“お宝話”に聞き入っている。
「この作品に出ることで何十年間と芝居をして学んできたことを振り返ったり、『あの時にこういうことがあった』と思い出したりもする。それがもう楽しくてね。相手の役者の芝居も知っているから、その楽しみもある。
芝居の運びかたは倉本さんも、『あんたたちは長くやってきたから、わかるだろう』なんて僕らにおっしゃったけれども」
●いしざか・こうじ/1941年6月20日、東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業。大学在学中の1962年にドラマ『七人の刑事』でデビュー。大学卒業後、劇団四季に入団。1976年に『犬神家の一族』に金田一耕助役で主演、市川崑監督でシリーズ化され空前の大ヒット。市川崑監督作品には他にも、『細雪』『ビルマの竪琴』など多数出演。俳優業のほか、司会者、クイズ解答者、作家などマルチに活躍。多趣味なことでも知られる。2009年にNHK放送文化賞受賞。『開運!なんでも鑑定団 極上!お宝サロン』(BSジャパン)、ドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)では主演を務めている。
取材・文■渡部美也/撮影■中庭愉生
※週刊ポスト2017年5月19日号