◆アメリカに「YES」と言わせろ

亀井:あんまりがっかりするようなことを言わないでよ。あなたが精神を抜きに実利で結び合っていけるというようなことをおっしゃるのは、おかしいと思う。

石原:精神って、どういうことよ?

亀井:独立心とか、自尊心とか。まず精神が先。

石原:独立心、自尊心を支えるものは何だよ。やっぱり、日本の国力じゃないか。日本の国力は何かといったら技術力じゃないか。

亀井:それは一流の文学者がおっしゃることじゃない。ソニーやホンダやトヨタの技術者が言うことだ。それだけでは国と国との関係で優位に立てないと思う。

 トランプは下手な鉄砲を振り回して、対日要求も自動車や農業について、強烈なことを言い始めたね。今から戦いが始まる。それに対して、かつて石原さんが言われたように、NO、NO、NO、と。逆に、もっと日本のものを買えってやらないといかんのだ。

石原:僕の『「NO」と言える日本』は、日本人が書いた本ではアメリカで一番売れた。あれは(ソニー創業者の)盛田昭夫さんとの共著だったのに、アメリカで出版する段階で盛田さんが途中で逃げちゃったのよ、ソニーの売れ行きに関わるからって。

 で、結局、僕一人が書き直して出したわけだけど、反響が面白かったよ。そのキャンペーンにアメリカに行ったときに、いろんなことがあったな。

亀井:大変な目に遭った?

石原:いや、すごく歓迎されたんだよ。人種差別に遭っている人たちからね。有名なアメリカの女性キャスターの番組に出たときに、黒人のライトマンがセットしてくれて、そのあとは自分は関係ないっていう顔で目をつぶって聞いてるの。そのときキャスターが、「あなたはアメリカに人種差別があるって言ったけど、どういう根拠ですか?」って言うから、「私はアメリカにたくさん友だちがいます。黒人もいるし、ヒスパニックもいるし、日系人もいますが、彼らに聞いても、アメリカには人種差別があるって、みんな言ってますよ」って言ったら、そのライトマンが突然目を覚まして、おれに向かって笑顔で親指を立てたんだな。

亀井:よく言ってくれたと。

石原:あれは非常に印象的だったね。

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