私が27才で結婚したのはこのTの弟です。Tと痴話げんかをして、しばらく会わないでいたら弟を連れてきて、「つきあってみれば」とけしかけたのです。同時にTはひとりで私のアパートに訪ねてきて、「ヤツとはどこまでいった」と言いながら私を押し倒しました。
実はもう1つ、私には秘密がありました。父が亡くなったあと、母親の再婚相手とも関係していたのです。母に対するひそかないやがらせで、私からモーションをかけたのです。 この3人と前後してセックスをして、妊娠しました。謀った? いえいえ、私は頭より体が動くタイプ。子供が欲しいと体が思うと、体がそうなるように行動してしまうのです。
何も知らない夫は娘の誕生を喜びましたが、不倫のTは「おれは知らないよ」とピシャリ。母親の再婚相手は、何も言わず、娘のお七夜にかかる費用を全額出してくれました。有名な神社でこの男たちが集まって写したのが、前回の冒頭で話した記念写真です。
ところで、今33才になる娘の父親は誰か。誰にも言ったことはありませんが、私はわかっています。生まれてきた娘を見たときから確信していて、疑ったことは一度もありません。間違いなく、夫の兄で不倫相手のTです。
まつげの長さ、手の形。肩甲骨の形。夫とは、決定的な違いがいくつもあるのですが、そもそも夫は自分の兄と私の関係を疑っていません。もちろんTだって、今に続く私との関係を、おくびにも出しません。
そして娘ですが、バイトをやめた数年前から部屋に引きこもっています。現実の男には興味がなくて、アニメの中の男だけで充分なのだそう。
そういうものの、欲求不満はたまるのでしょう。それとも何かを知ったのか、このところ私に手をあげるようになりました。
私は、いつかこの娘に殺されるのでしょうか。それならそれでも仕方がないと、この頃はそんなことばかり考えています。
〈了〉
※女性セブン2017年5月25日号