しかし、この後味の悪さこそ、『CRISIS』の本質。各話の犯人やテロリストが悪なのか? それとも、稲見たち公安機動捜査隊特捜班が守っている国家や権力者が本当の悪なのか? という2段構えにして、視聴者の心を揺さぶっているのです。
それを6話まで続けた成果なのか、当初はモヤモヤしているだけだった視聴者も、徐々に物語の奥深さに気づきはじめました。田丸がつぶやいた「俺たちに勝ち目はあるのか……」、稲見が上司の鍛冶(長塚京三)に言った「もし私が権力に逆らったら殺しますか?」などセリフの妙もあり、悩み苦しむ彼らに感情移入できるようになっているのです。
そんな後味の悪い結末を仕掛けた立役者は、原案・脚本の金城一紀さん。2014年に放送された同じ小栗旬さん主演作『BORDER』(テレビ朝日系)の最終回で、「主人公の刑事が犯人を殺してしまう」という後味の悪い結末で騒然とさせたことを覚えている人も多いでしょう。金城さんは常に予定調和を嫌い、視聴者の胸をざわつかせてきただけに、『CRISIS』は今後の展開が読めません。
毎週積み重ねている後味の悪さは、本当の悪が成敗される最終回へ向けた壮大な前振りのような気がしますが、「いや、金城さんなら最悪の結末を用意しているかも……」とも思ってしまうのです。クライマックスに待ち構えているのは、より大きなカタルシスか? それとも、より大きな後味の悪さか? どちらもありえるだけに注目を集めるでしょう。
◆セオリーとは真逆の刑事ドラマ